【中将】 「神田川」の場合は一緒に銭湯に行って、先に上がった彼女が寒さの中で震えてる……って描写だけど、若い恋愛ならではの心細さってありましたよね。貧しい若者の生活、恋愛を描いた作風は「四畳半フォーク」と呼ばれ、当時の歌謡曲にも大きな影響を与えましたが、今でも影響を受けてるフォーク系ミュージシャンってたくさんいそうです。
さくらと一郎の「昭和枯れすすき」(1974)も「神田川」と同時期ですが、ちょっと悲惨すぎてあんまりリアルじゃありませんね。「貧しさに負けた いえ世間に負けた この街も追われた いっそきれいに死のうか」。
【橋本】 貧困がちょっとポップになってますね。
【中将】 1975年のオリコン年間ランキング1位になるくらいのヒットなので、共感する人もいたんだろうけど、若者が聴いたらネタ要素満載だったでしょうね。
さて、最後にお届けする曲は1984年に浜田省吾さんが発表した「MONEY」。バブル経済に向かっていく社会の空気を感じた浜田さんが、「金」をテーマに作ったものだそうです。
育ててくれたお兄さんに「奴は自分の夢俺に背負わせて 心ごまかしているのさ」だったり、彼女が「だけどゆうべどこかの金持ちの男と町を出ていった」だったり、真剣なんだけど笑ってしまう要素満載という……。
ちなみに「ベッドでドン・ペリニヨン」という歌詞についても、当時は「ドン・ペリニヨン」があまり有名ではなく「SEXの体位ですか?」と聞かれることもあったそうで……。
【橋本】 その体位、興味あります(笑)。
【中将】 (笑)。まあ、時代はこれからバブルに向かうわけですが、現代にくらべはるかにお金への渇望があったということですね。これから将来は悲しい貧困ソングが生まれない時代であるといいのですが。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2022年7月31日放送回より)