このスタイルは、1960年代の「ドレスコード(服装規定)」としては完全に「アウト」でした。当時、大きな議論が巻き起こったといわれていて、賛否両論あったようです。ただし、ジェームズ・ボンドは海軍の中佐です。サブマリーナーはイギリス海軍の当時の装備品(ショーン・コネリーの私物を使ったという説もありますが)だったため、この腕時計の選択は決して不自然なものではありません。
時代は流れ、「スーツにダイバーズウォッチ」をとがめる人は少なくなりました。しかし、1本だけですべてのスタイルに対応できる「万能な」腕時計は存在せず、身に着けるシーンによって、「適するものと、そうでないもの」は現代社会にも存在する、とRYさんは話します。ここで、着ける腕時計を選ぶ際に参考にしたい「5つのシーン」を紹介しましょう。
◆腕時計は5つのシーンに大別される! どのシーンに、どんな時計がマッチする?
RYさんいわく、メンズファッションで最もフォーマルなのは、タキシードなどに代表される「トップフォーマル」です。次に、銀行員や営業マンなどの、いわゆる“お堅い”方々が着用する「ビジネスフォーマル」、内勤が中心の人に人気の、ジャケパンスタイルなどの「ビジネスカジュアル」へと続きます。それらに次ぐ、デニムにTシャツといった「カジュアル」よりさらにラフなスタイルが、「アウトドア」です。これら5つのシーンを念頭に置くことで、腕時計選びに迷うことは少なくなるでしょう。
一方、腕時計も様々な種類に分けられます。最も小ぶりで、派手さがないのが「ドレスウォッチ」です。革ベルト(レザーストラップ)が特徴の一つで、文字通り、最もエレガントとされています。次に控えめな印象なのが「3針スポーツ」。ドレスウォッチに負けず劣らずシンプルですが、メタルブレスを備えることで耐久性が上がり、スポーティーな印象です。
防水性が高い「ダイバーズ」、飛行機の計器のように、メカメカしい「パイロット」、ストップウォッチのついた「クロノグラフ」……これらはいずれも文字盤は大ぶりで、厚みもあるため、トップフォーマルにはそぐいません。ビジネスシーンでは、現代社会では使えなくはないですが、カジュアルな服装の時により、真価を発揮します。アウトドアを楽しむ際には、カシオの「G-SHOCK」に代表されるような、多少の衝撃ではびくともしない、頑丈な時計を素直に選ぶのも一つです。
前述の通り、RYさんは、すべてのシーンにそれ1本で対応できる「万能時計」は存在しないと話します。しかし、あえて挙げるならば、RYさんも所有する、ヴァシュロン・コンスタンタンの「オーヴァーシーズ」に代表される、「ラグジュアリースポーツウォッチ」が最も近いということです。これらの時計は工具を使うことなくベルト(ブレスレット)をラバーやレザーなどに変えられるものが多く、オフィスでの仕事から旅先でのパーティーまで、様々なシーンでの使用が想定されています。