現代的な“萌える”美少女ボイスが成立したのは1970年前後? 魅力あふれる昭和の美少女ボイスの持ち主たちについて、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 今回のテーマは昭和の美少女ボイスの持ち主たち。もちろん昭和にも美少女歌手やアイドルは年代ごとに存在するんですが、現代的な「美少女ボイス」という基準で考えると、結構絞られてくるんです。というのも、1960年代までの歌手は演歌はもちろんポップスでも鼻濁音やこぶしをかけた歌い方、声楽っぽい歌い方が主流でした。ザ・ピーナッツとかそうですよね。ようやくその傾向が薄まるのが1970年前後。現代的な“萌える”美少女ボイスの持ち主たちが登場してくるわけです。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 たしかに1960年代の曲だと明らかに声に古さを感じることが多いです。
【中将】 最初期の美少女ボイスの持ち主に五十嵐じゅん(現・五十嵐淳子)さんがいます。セカンドシングルの「ちいさな初恋」 (1971)とかフレンチポップ風のメロディーに乗せた舌足らずなあどけない歌声がとてもいい感じですね。
【橋本】 この声はかわいいですね! 昭和ならではのキュンくるものがあります。歌手をしていらしたイメージはなかったんですが今でもとてもきれいな方ですよね。
【中将】 中学の頃から“学校一の美少女”と言われてたそうです。10代でモデル活動をはじめて1970年に芸能界デビュー。1977年にはドラマ共演がきっかけで中村雅俊さんと結婚されています。まさにスターな生き方!
【橋本】 歌も歌えて顔もかわいいって……欲しいわ(笑)。
【中将】 菜津美ちゃんも十分かわいいと思いますよ(笑)。さて、次にご紹介する美少女ボイスの持ち主はこの方、太田裕美さん。懐メロ番組だと「木綿のハンカチーフ」ばかり挙げられがちですが、デビュー曲の「雨だれ」(1974)もすごくかわいいです。
【橋本】 かわいい! こういう悲しいバラード的な曲って無駄に歌い上げちゃう人が多いけど、太田さんの歌い方は軽くて、ロリボイスを完璧に活かしきっています。
【中将】 太田さんは中学から声楽科に通っていたんですが、同級生からは「変な声」と言われてたそうです。いわゆる声楽的なものとは全然違う、当時としては斬新な声だったんですね。
【橋本】 今となっては声楽的な発声のほうが特殊に感じてしまいますが、当時と今では感覚が全然違ったんですね。
【中将】 太田さんの歌い方は後の世代のアイドル歌手や声優に大きな影響を与えたと思います。ロリボイスの元祖的な存在ですね。
【橋本】 ロリボイス(笑)。でもたしかに太田さんは今、新人で出てきても売れる声だと思います。
【中将】 ちなみに太田さんが芸能界入りした理由は「ザ・タイガースのジュリーに会えるかもしれないと思った」だそうですが、次にご紹介する美少女ボイスの持ち主は郷ひろみさんにあこがれて芸能界入りした松田聖子さん。いろいろ名曲だらけですが「夏の扉」(1981)なんてすごく声の魅力が活かせてますよね。太田さんみたいなロリっぽさはないですが、独特のぶりっ子感があります。
【橋本】 聖子さんの声、大好きです。
【中将】 聖子さんの声質について、数々のスターを発掘した芸能プロデューサーの上条英男さんは著書で「〇ックスの声」と表現しています。
【橋本】 え! え! え!?