大阪・あべのハルカスの大阪芸術大学スカイキャンパスで開催中の『中村佑介20周年展』を紹介するシリーズ第2回。今回は、“関西在住”と“イラストレーターとしての誇り”、そして、“低き自己肯定感”ゆえに築かれた20周年への思いを軸に届ける。
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◆「2.5年ぐらいの感覚」だった5年間 そして大阪へ
大阪芸術大学スカイキャンパスで、前回「中村佑介展」が開催されたのは5年前、15周年のことだった。以降、今展までの間に巡回展として約20か所を回るはずだったのが、新型コロナの影響で、回れたのはたった6か所。自身も心待ちにしていた「金沢21世紀美術館」(石川県)での会も、開催にこそこぎつけたものの、現地が緊急事態宣言発出中だったことから、地元以外からの人が訪れるのは難しい状況だった。
しかし、画業が止まることはなかった。コロナ禍にあっても、「ワンダーウーマン」や「ゴジラ」など名だたる映像作品や、自身のTwitterのヘッダーにも設定している「浅田飴」などと複数のコラボレーションを実現。それでも「15周年から5年あったのに、2.5年ぐらいしか経っていない感覚」と語る中村氏の様子に、イラストは“絵”でありながら“静物”ではないことを改めて認識した。
中村氏の作品は、CDジャケットとなり、本の表紙となり、商品パッケージとなり、洋服やグッズとなって私たちの目に触れる。決して一つところに留まりはしない。そんなイラストの誕生のきっかけや創作エピソードに触れられる展覧会は、中村氏の思いをも、人へ各地へと運び届ける存在なのだろう。それが大阪に“帰って”きているのが、今だ。
◆夢の後押し 「イラストレーターの地位向上」も見据えて
兵庫県宝塚市出身、大阪在住の中村氏にとって、関西ゆかりの仕事は「恩返しできていると感じる」ものなのだそう。展覧会場にも、阪急電車のラッピング電車や宝塚市の観光パンフレット、サッカーJ1のガンバ大阪のグッズ、神戸凮月堂のゴーフルのパッケージ(神戸市立須磨離宮公園がモチーフ)、そして母校・大阪芸術大学関係の作品など数々の作品がそろう。
なかでも、とくにうれしかったのが「第41回大阪国際女子マラソン」のビジュアルなのだとか。理由は、地元の大きなイベントであることはもちろん、たった1枚の絵であらゆる要素やメッセージを表す“イラストレーター”の本領が認められた感があったからだという。
一方、2025年に開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)の仕事に「何一つ呼ばれていない」ことには「努力が足りないなと思いますね、自分の。関わりたいと思う気持ちはありますね」とまなざしを強くする。さらには半分おどけるように「偉くなって、“虚像”みたいなのを作りたい。みんなが思っている以上に大きなイメージを作りたいですね!」とも。しかし真意に虚栄心は無い。明確な意図を持った発言だ。その意図とは…