さらに、フレーバーとして定着している「生姜」ですが、銭湯文化と深く関わっている可能性もあるのだとか。昭和初期の銭湯では、人々のあいだで風呂上がりに「ニッキ水(シナモンが入った飲み物)」や「みかん水」をグイッと飲むのがおなじみだったそう。その中に『ひやしあめ』もラインナップしていたのです。
「昭和の初め、冷蔵技術は今ほど発達していませんでした。そのため、生姜のぴりっとした清涼感と爽やかな喉越しが好まれ、定番の味となったのではないでしょうか」(岩井製菓)
『ひやしあめ』と『あめゆ』が誕生した場所について、はっきりとした答えはないそうです。ですが、江戸時代末期の大阪の様子が知れる「花の下影」という本の中に『飴湯』と書かれた絵が登場していることもあり、おそらく大阪で生まれたのではないか……という説が有力です。
「大昔は関西以外の地域でも『ひやしあめ』や『あめゆ』の文化があったそうですが、空襲や大震災で各地の販売店・製造工場は潰れてしまったと聞いています。そんな中、大阪や京都では被災をまぬがれ残った所が多かったため、関西では『ひやしあめ文化』が定着したのでしょう。また、食文化が盛んな地域性も手伝って、過酷な戦後を経てなお、『ひやしあめ』は消えることなく今に残っているのかもしれません」(岩井製菓)
首都圏や九州などでも『ひやしあめ』を出張販売している岩井製菓。「これが飴?」と首をかしげる人も少なくないのだとか。しかし、ひとくち飲めば「なんだか懐かしい!」と笑顔になるそうです。
時代のうねりに翻弄されながらも生き残り、関西に根づいた『ひやしあめ』。再び全国に浸透する未来が訪れるかもしれません。
(取材・文=つちだ四郎)
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