ロシアによる軍事侵攻後、ウクライナの生の姿を取材するフォトジャーナリスト・小原一真(おばら・かずま)さんの写真展「ウクライナ避難民とロマの人々」が、梅田スカイビル(大阪市北区)で開かれている。9月11日まで。
■そこに、人の姿はあるのか
8月24日、侵攻開始から半年が経過した。ウクライナとロシア、どのような結末を迎えるのか誰にもわからない。写真展開催は人々の関心を呼び、会期が延長された。
小原さんは2011年3月に起きた東日本大震災後、勤めていた会社を退職してカメラを手に東北へ向かった。岩手県出身の小原さんにとって、親しい友人が宮城県南三陸町におり、他人事ではなかった。テレビ報道で目にした被災地の実情は、襲う津波の様子ばかりで「ただただ俯瞰(ふかん)的」に過ぎなかった。そこに居る人の姿がなかったからだ。
フォトジャーナリストとしての第一歩を踏み出したのはこの時だった。
被災して職を失い、原発で働くしかなかった男性と福島で出会う。そして同年8月、 当時立ち入ることができなかった東京電力・福島第一原子力発電所の内部を初めて撮影したフォトジャーナリストとして、欧米メディアで発表する。
■チョルノービリ(チェルノブイリ)での勢力取材がもたらしたもの
その後、2015年から約2年間、ウクライナ・チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故に焦点を当てた作品を手掛ける。母体で被ばくして甲状腺の病気を患った女性を取材、これが高く評価され、世界に名を知られることとなった。
小原さんは、新型コロナウイルスが世界を襲った2020年以降、病棟で最前線に立つ看護師らの看取(みと)りについて、文字と写真で記録する取材を続けていた。客観的データとして現状を示す”感染者や死者”という数は、一人一人を匿名にし、個別の具体的な「死」が見えにくくなる、いわば「ブラックボックス」になっているのではと疑問に思っていたからだ。
そして2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まる。実はその直前、北部のスラブチチに住む友人の女性からSNSでメッセージが届いた。「兵士となった夫が最前線で戦っている。電気も食料もない。命の危険にさらされている」。この夫妻とはチェルノブイリの取材を通じて知り合い、交流を続けていた。
この情報をキャッチした小原さんは軍事侵攻を確信した。「何か力になれないか」。2022年3月以降、7月にかけてウクライナ、ポーランド、チェコ、モルドバの4か国に入り、シャッターを押し続けた。
・「Platform On The Border 境界線上のプラットフォーム」小原一真さんサイトより
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