――いつ、どこで災害が起きてもおかしくない状況の中で、災害に遭ったときに使える公的救済制度にはどのようなものがあるのかを知っておくことが大切なんですね。
【津久井弁護士】そうですね。いざという時のために、「被災した時に助けになる制度はたくさんある」ということを、まず知っておいてほしいです。被害を受けた時に頭を抱えて呆然とするのではなく、あらかじめ知っておくことで、助けになる制度を探して自分の役に立ててほしいです。なによりさまざまな制度があると知っているだけで安心ですし、必ず助けになると思います。
また、声を上げることもとても大切です。先ほど説明した「被災者生活再建支援法」は、阪神大震災の時はありませんでした。被災した借家人の方々を救済するため、なんと太平洋戦争の時の法律を適用したのですが、全く状況が違ったため、かえって混乱しました。やはり公的支援が必要だという神戸の皆さんの切実な声が形になって、被災者生活再建支援法という法律が実現されましたが、その後の東日本大震災では、津波や原発問題が起こったため、また状況は違う。災害が起きて、初めて従来の仕組みがおかしいと気づくのです。
我々弁護士は、被災者の声を集め、知恵を練って法律を作るのが仕事です。そのためにも、まずは困っていることやおかしいと思ったルールには声を上げ、変えるべきだと訴えてほしいと思います。
◆津久井進(つくいすすむ)弁護士 芦屋西宮市民法律事務所(兵庫県西宮市)
神戸大学法学部卒業。阪神・淡路大震災が起きた1995年に弁護士登録。登録後1年目から被災地の復興支援にかかわり、その後も全国各地で起きる災害の復興支援に駆け付けてきた。被災者生活再建支援法の大改正など、被災者を支援する制度の立法運動に取り組む。著書に「Q&A被災者生活再建支援法」(商事法務)、「大災害と法」(岩波新書)、「災害ケースマネジメント◎ハンドブック」(合同出版2020)等。