昔懐かしい銭湯の“アイコン”ともいえる「ケロリン桶」。ケロリンとは、富山めぐみ製薬株式会社が製造・販売する解熱鎮痛剤「ケロリン®」のこと。ケロリン桶は、その広告として全国各地で知られています。最近はスリッパやタオルなどのケロリングッズも展開されていることから、お風呂屋さん以外でも見かける機会が増え、より身近な存在となってきました。
現在も変わらぬ知名度を誇るケロリン桶ですが、そもそも、なぜ薬の広告を“桶”で作ったのか? 富山めぐみ製薬株式会社のOTC事業部東京支社で管理薬剤師を務める北村さんに話を聞きました。
――解熱鎮痛剤「ケロリン®」とは、どのような薬なのですか?
【北村さん】 今年で発売97年目になる頭痛薬(鎮痛剤)です。全国のドラッグストアなどで販売されており、常備薬として利用されているご家庭もあるそうです。
――なぜ桶が薬の広告に選ばれたのですか?
【北村さん】 銭湯が広告媒体となっていた東京オリンピックの前年(昭和38年)に、とある代理店さんが「湯桶にケロリンの広告を出しませんか?」と持ちかけてくださったことがきっかけでした。しかし、世間では“お風呂=垢がつく”というイメージがつくことを嫌がる会社が多く、あまり普及しなかったそうです。そのなかで、唯一うちだけが承諾したそうです(笑)。
――なぜ広告を出したのですか?
【北村さん】 オリンピックの前年、世間では公衆衛生の整備がおこなわれていました。そのなかで、公衆浴場に向けて「木の桶はカビが生える可能性があるため、プラスチックに変えてください」という細かな規定が誕生しました。桶が新たに生まれ変わるちょうどいい機会だなと思い、桶に広告を打ち出しました。
加えて、医薬品が大々的に広告を打ち出すには、制約があってなかなか難しいという問題がありまして……。この桶が、医薬品の「ケロリン®」が普及するきっかけにもなったかなと思います。
――黄色い桶に緑の文字が印象的ですが、こだわりがあるのですか?