波立つ水、風の揺らぎ。古来、人々がさまざまなアプローチで表現してきた“揺らめく美”に着目した展覧会「揺ら美(ゆらび)」が神戸市東灘区の白鶴美術館(本館、新館)で開かれている。同館が所蔵する貴重な美術品の中から、水や風に関わる作品計82点を公開。古今東西、普遍的に表されてきた水と風の多様な表情を味わえる展示となっている。12月11日(日)まで。
会場で最初に目を引くのは、大型の盤「鍍金龍魚文大銀盤(ときんりゅうぎょもんだいぎんばん)」(高さ約20cm、口径約68cm、中国・唐時代)。内側の底には龍魚とともに激流を思わせる波文が渦を巻くように描かれ、側面は蓮弁と双鳥文が整然と施されている。縁の一部が二層に分かれ、部分的に亀裂と段差があることから、内外二重に合わせて制作された可能性も考えられる。制作時の用途は不明だが、水を入れる容器であると想像されるという。
「鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗(ときんりゅうちえんおうそうぎょもんぎんせん)」(重要文化財、高さ約5cm、口径約15cm、同時代)にも長い舌を突き出し、特徴的な角、ひげを持つ龍魚らしきものがおり、その周りを強い水流が渦巻いている。水流の上におしどりや魚、ナマズなどが表され、あたかも龍魚を中心に旋回しているかのよう。1mmほどの細かな彫鏨(ほりたがね)で波がこまやかに描かれている。
法隆寺伝来の「金銅小幡(こんどうしょうばん)」(重文、長さ約40cm、幅12cm、白鳳時代)も見どころの1つ。仏堂内に掛けて飾った荘厳具とされ、上部が欠けているが、東京国立博物館の法隆寺宝物館所蔵の下部に欠損部が一致する。銅版を切り透かした技法で風に舞う飛天が表され、天衣の翻るさまが美しい。
そのほか、「青銅博山炉(せいどうはくざんろ)」(中国・後漢時代)、新館では、ペルシア中央部のカーシャーンで制作されたじゅうたん(1900年ごろ)などを展示している。
同館の学芸員は「本来、捉えるのが難しい水と風のイメージを、人々がどのように表現してきたか、各作品の技法も含めて楽しんでいただけたら」と話している。
◆秋季展「揺ら美(ゆらび)」
会場:白鶴美術館
会期:2022年9月23日(祝・金)~12月11日(日)
開館時間:10:00~16:30(入館は16時まで)
休館日:月曜と10月11日 ※10月10日(月・祝)は開館
入館料:大人800円、高大生500円、小中生250円
問い合わせ:同美術館078-851-6001
白鶴美術館 https://www.hakutsuru-museum.org/museum/