「屋号が一文字で一筆書きだと縁起がイイということもあって決めたんですけど、今のところよくわかりません(笑)」(高木さん)
もともと、高木さんの父が同建物の1階で居酒屋を経営していた。高木さん自身はこれまで飲食店でのホール経験は豊富だったが、調理の経験はなかった。そんななか、コロナ禍で飲食店の営業が思うようにいかなくなったときに、父の店を間借りしてお弁当の提供を始めたところ、「おうちや職場で気軽に食べられる」と好評を博したそう。
しかし、居酒屋の営業が再開すると父から「邪魔やから出て行って」とまさかの通告。当時、同じ建て物内で空き物件になっていた2階のスナック「じゅん」に移った、というのが現在に至るまでの事の経緯だ。
改装も考えたが、その間に常連客が離れるのをおそれ、もともとあったスナック「じゅん」の内装をいかしたまま営業を始めたのだそう。事前に予約すれば、昭和を彷彿(ほうふつ)とさせる赤いボックス席で、あたたかい「定食」をいただくことも可能だ。
「開けづらい」ものは、もうひとつある。
弁当の内容は店主の気まぐれで提供されるのだが、一番の人気メニューは「デラックスのり弁」(900円)。
手作りの総菜が平均15品も入っており、その総菜の多さから、のり弁といいながら「のり」が見えない。フタも何とか閉めたという具合で、なんとも「開けづらい」。神戸の台所と呼ばれる東山市場も近く、旬の食材を安く仕入れられるため「ついつい盛ってしまう」とのこと。