EXILEの「Ti Amo」(2008)など平成以降もたびたび話題になる不倫ソングですが、昭和にははるかに多くの不倫ソングが生まれ、ヒットしました。ポップ歌手も不倫ソング、演歌歌手も不倫ソング、スパースターも不倫ソング……。そんな不倫ソングの黄金時代について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 今回のテーマは、みなさん大好きな不倫ソング特集です。最近もいろんな不倫ソングがありますが、昭和にさらに多くの不倫ソングがヒットしていました。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 昭和の不倫ソングって露骨で生々しいイメージですよね……!
【中将】 最近のは婉曲表現が多いけど、昔のは歌詞を読んだら「不倫やん」ってすぐわかる気がしますね。でも、そんな不倫ソングが幅広い層にウケてた昭和って、今さらながらすごいなと思います。たとえば小林明子さんの「恋におちて -Fall in love-」(1985)なんて、ポップスファンだけでなく、子どもからスナック通いしてるおじさんおばさんにまで支持されたり、オリコン年間ランキング3位ですから。
【橋本】 私は徳永英明さんが2007年にカバーしたバージョンでこの曲を知りましたが、まだ子どもだったので不倫っぽい表現にピンときてなかったですね。
【中将】 「ダイヤル回して 手を止めた」や、「土曜の夜と日曜の 貴方がいつも欲しいから」など、当事者男性にはドキドキの内容だけど、確かに子どもにとっては意味わかんないですよね。『金曜日の妻たちへ』(TBS)という不倫ドラマの主題歌だったので、リアルタイムで大人だった人ならみんなわかる感じなんですが。
似たポジションでは沢田研二さんの「LOVE(抱きしめたい)」(1978)なんかもそうですね。この曲は1978年『NHK紅白歌合戦』の大トリソング。沢田さんが「勝手にしやがれ」(1977)や「サムライ」(1978)で連続ヒットを記録していた時期で、鼻たらした子どもからヨボヨボのお年寄りまでお茶の間で不倫ソングにクギ付けだったという……。
【橋本】 1年の終わりが不倫ソングって!(笑) この曲は初めて聴きましたが、すでにイントロから重々しくて不倫感がよく出ていますね!
【中将】 「指輪はずして愛し合う いけない女と呼ばせたくない」なんて、いかにもな表現ですが、当時どれだけの人がこの曲を不倫ソングと認識していたんでしょうね。