さて、“アジアの歌姫”として1970年代から1980年代に一世風靡したテレサ・テンさんですが、代表作の「つぐない」(1984)、「愛人」(1985)、「時の流れに身をまかせ」(1986)はすべて不倫ソングで、3曲まとめて”不倫三部作”なんて呼ばれています。「愛人」とかそのまんまですね。
【橋本】 全曲大好きですが、全然不倫ソングと思ってなかったですね……。
【中将】 「たとえ一緒に街を 歩けなくても」って表現とか、よく聴けばわかるんだけど、案外リスナーってそこまで気にせず聴いてるんですよね(笑)。
でも、こういう不倫ソングが流行った背景には、スナックの流行があったと思います。おじさんがホステスと一緒に歌って擬似不倫を楽しんだり、口説くきっかけにしたり。
【橋本】 なるほど! それに昭和の不倫ソングってどこか不倫へのあこがれみたいな要素を感じますよね……。
【中将】 不幸な境遇に打ちひしがれるだけじゃなく、妙に執念や色気を感じるんですよね。そういう要素がもはやネタの境地にまで昇華された名曲が島津ゆたかさんの「ホテル」(1985)だと思います。「ホテルで逢ってホテルで別れる」とか「私の家の電話番号が 男名前で書いてある」ときて、「奪えるものなら奪いたいあなた」……もはやなんとも!
【橋本】 ここまで振り切られたら言うことないですね! これぞ昭和! 今日聴いた不倫ソングの中で一番のお気に入りになりました!
【中将】 日本では不倫は一応ダメなこととされてるらしいんで、リスナーや読者のみなさんはどうぞお気をつけください(笑)。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2022年10月4日放送回より)