最先端の科学と医療の現場とは… 神戸医療産業都市で一般公開イベント 今年は現地とオンラインで開催 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

最先端の科学と医療の現場とは… 神戸医療産業都市で一般公開イベント 今年は現地とオンラインで開催

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 神戸市中央区・ポートアイランドにある先端医療技術の研究開発拠点「神戸医療産業都市」で、10月29日と30日の2日間、科学と医療の現場を公開する催し「神戸医療産業都市 一般公開 2022」が行われます。

 昨年はオンライン開催のみだった同イベント。今年は現地で世界最先端の医療と科学に触れることができる体験イベントや見学ツアーも実施されるなど、オンラインも組み合わせたハイブリッドでの開催が予定されています。

 今回の「神戸医療産業都市 一般公開 2022」がどういった内容なのか、ラジオ番組『サンデー神戸』(ラジオ関西)の中で、神戸医療産業都市の推進母体である神戸医療産業都市推進機構の天辰香織さん(経営企画部広報戦略課課長代理)に話を聞きました。

神戸医療産業都市 一般公開 2022
神戸医療産業都市 一般公開 2022

――昨年はオンラインのみでしたが、今年は現地とオンラインのハイブリッド開催になった「神戸医療産業都市 一般公開」イベントについて、詳しく教えてください。

【天辰香織さん(以下、天辰さん)】神戸市と私ども神戸医療産業都市推進機構が、ポートアイランドを拠点に進めております、最先端の医療や研究開発が行われている神戸医療産業都市(KBIC)の取り組みを、実験体験や見学ツアー、セミナーなど、様々なプログラムを通して、市民の皆さまに知っていただく、年に1度の市民イベントです。

 今年はタイトルを、「離れていても近くても。みんなで体感、医療と科学の最先端。神戸医療産業都市一般公開2022」としまして、初のハイブリッドでの開催を予定しております。

 3年ぶりの開催となる現地会場では、スーパーコンピュータ「富岳」の見学ツアーを行うほか、実験体験講座、薬剤師体験などの人気イベントが復活します。ほかにも、神戸医療産業都市で働く“達人”のリアルにフォーカスを当て、医療分野のさまざまな職種を知ることができる、理系・医療系の仕事に興味を持つ若い世代に向けたセミナーや、毎年恒例のスパコンセミナーなども開催いたします。

 また、オンラインでは、大学や企業の取り組み、研究者のお仕事の紹介のほか、市民の医療の「最後の砦」を担う中央市民病院のバックヤードも初公開します!

 今年度は新型コロナ感染症対策として、すべての現地イベントは事前登録制をとっており、申込み受付はすでに終了してしまったのですが、オンラインでも学べる、楽しめるイベントやコンテンツを多数ご用意してお待ちしておりますので、29日(土)、30日(日)は、ぜひウェブサイトからご参加いただきたいと思います。

神戸医療産業都市推進機構のあるクリエイティブラボ神戸
神戸医療産業都市推進機構のあるクリエイティブラボ神戸

――「神戸医療産業都市」は、現在 企業・団体の数も相当な数になっているそうですね。まず、「神戸医療産業都市」の全体像・概要をお聞かせください。

【天辰さん】 神戸医療産業都市は1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた神戸の経済を立て直し、未来のいのちを守る場所となることを目指す震災復興プロジェクトとして始まりました。

 現在、多くの企業・団体が集積し、1万2千人以上の方々が働き、そして経済効果は年間1562億円と、日本最大級のメディカルクラスターとなるまで成長していますが、我々としてはもっともっと神戸医療産業都市について、1人でも多くの人に知ってもらいたいと思っています。

 一口に「医療」といっても、お医者さんが病気やケガを治療するという行為を見ても、まず、医師や看護師など人材が必要ですし、治療のための薬、包帯などの衛生用品、検査のための機器、手術になれば、ベッドや機器、用具といったものが必要といった具合に、医療は非常に裾野が広く、ヘルスケアや福祉といった様々な分野に広がる領域です。神戸医療産業都市は、企業、大学、研究機関、病院などが集積することで、実験室で行われる基礎研究から、実際の患者さんを対象にした臨床応用、そして製品を社会に届ける産業化まで、一体的に取り組む新たな医療システムの構築を目指しています。

――そんな「神戸医療産業都市」のなかで、天辰さんがおられる「神戸医療産業都市推進機構」とは、どのようなことをされているのですか?

【天辰さん】 一言で申し上げると、我々、神戸医療産業都市推進機構は、文字通り神戸医療産業都市を推進するための中核的支援機関ということになります。

 具体的には、先程申し上げたように、このポートアイランドに集積している産学官医の連携・融合を促進する総合調整機能を担っています。分かりやすく言うと、企業、大学、研究機関、病院、行政を橋渡しし、それぞれが連携して機能できるようにつなぐ役目をしています。

 例えば、新しい薬の開発を例にしますと、日本では1年間におよそ40~50種類の新しい薬が誕生しています。新しい薬の開発は、薬のもとになる物質を探す基礎研究にはじまり、さまざまな研究や試験を行っていきますが、1つの薬を開発するには約10年以上もの長い期間と200~300億円もの費用がかかるといわれています。

 神戸医療産業都推進機構では、企業、大学、研究機関、病院、それぞれが得意とする分野を持ち寄って、効率よく開発ができるように、それぞれをつなぎ支援する、ということをしています。

 また、それだけでなく私たちは、最先端の医療を実現するための研究開発、臨床応用の支援、革新的医療技術の創出などにも取り組んでいます。

 こうしたミッションを達成すべく機構を率いているのが、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑理事長です。昨年の4月には、本庶理事長のノーベル賞受賞と当機構20年を契機に、新しい研究施設である次世代医療開発センター(HBI)を開設しました。

 HBIには、共同研究ラボ、共用機器室を備え、分野の異なる研究者同士がリアルタイムで交流できる環境が整っています。研究というのは、例えば、たまたま昼食をともにした人と話をしていたら、とても役に立つ情報が得られたということが結構あるものです。HBIで“予期せぬ情報交換”が気軽に行われ、ノウハウを共有することによって、新しい医薬品や医療機器の開発につながる連携が取りやすくなると考えています。

 私たちが「橋渡し」となって、みんなをつなぎながら実現していくというのが神戸医療産業都市の特徴です。おかげさまで、多くの団体に集まっていただいていますが、さらなる発展のために努力していきたいと考えています。

――いろいろな成果が具体的に出てきていると思いますが、詳しく教えてください。

【天辰さん】 最近話題になったものでは、再生医療用細胞シート「サクラシー」が、9月1日から保険適用されたことです。「サクラシー」は、眼の難病である「角膜上皮幹細胞疲弊症」を治療するものです。

 黒目(角膜)と白目(結膜)のさかい目が傷つくことで視力低下や痛みが生じる病気で、重度になると、まぶたと眼球がくっつき、失明することもあります。「サクラシー」は、患者さん自身の口の中の粘膜の細胞を培養して作った細胞シートを眼に移植することで、くっついたまぶたと眼球を改善することができる新たな治療法として期待されています。

 この「サクラシー」は、京都府立医科大学のチームが開発し、当機構が製造、ひろさきLI社が厚生労働省から承認を取得して販売しています。当機構では、開発段階から臨床試験を通して厚生労働省への申請に至るまで10年以上支援を続け、総合的にサポートした再生医療用製品となります。ひろさきLI社の開発責任者によると「サクラシー」の名前には、「患者さんが桜を見ることができるように」との願いが込められているそうですよ。

 また、日本発の手術ロボット「hinotori」が上市(じょうし=開発を経て承認)されたことも大きな成果の1つです。メディカロイド社が開発した「hinotori」は、お腹に開けた小さな穴に内視鏡カメラや手術器具を挿入して行う「内視鏡下手術」をサポートするロボットで、傷が小さく患者様にやさしい低侵襲手術を行うだけでなく、高い技術が必要な内視鏡下手術を、ロボットを介して行うことで習得しやすくし、ロボットに搭載された様々な機能で執刀医や手術チームの医療従事者がスムーズな手術を実施できるようサポートします。この最先端の医療機器の上市までには実に多くの人がかかわっていますが、当機構のコーディネーターもその一翼を担っています。手術支援ロボットの開発構想段階において、薬機法に関する相談を中心に伴走コンサルとして携わってきました。コーディネーターが地元企業の技術を紹介することもあり、医療産業のエコシステムが機能している神戸医療産業都市ならでは特徴であると自負しております。

 本日はご紹介しきれないのですが、他にも様々な薬や医療機器が生まれております。神戸医療産業都市のウェブサイトには、研究・製品化事例を多く掲載していますので、ぜひ「神戸医療産業都市」もしくは「KBIC」で検索していただき、神戸から生まれた成果をご覧いただければと思います。

――一昨年来のコロナ禍ですが、感染症という広いスタンスで、社会へ貢献できる医療産業都市の成果を教えてください。 

【天辰さん】 もちろん神戸医療産業都市は、新型コロナの対応でも力を発揮しております。神戸医療産業都市にある「株式会社イーベック」が新型コロナウイルスの治療薬となる抗体を開発しています。従来株、アルファ株、デルタ株、そして現在猛威を振るっているオミクロン株のすべての変異株にも高い効果が確認されており、国産治療薬の開発が期待されております。

 また、皆さんテレビでも一度はご覧になったかと思いますが、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた新型コロナウイルスの飛沫・エアロゾル感染予測シミュレーションでは、社会に対する新型コロナウイルスの飛沫・エアロゾル感染に対する理解を進め、その対策の重要性を啓発することに貢献しました。


【神戸医療産業都市 一般公開2022】

【『サンデー神戸』番組HP】

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サンデー神戸 | ラジオ関西 | 2022/10/16/日 09:00-09:30

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