▽きっかけが不登校のケースが多い
―ひきこもりというと、家から出ず、ごはんも作ってもらうというようなイメージがあります。
船越:厚生労働省が出したガイドラインでは、社会参加を回避し、原則的に6か月以上家庭にとどまり続けている状態です。他者と交わらない形での外出をしている場合も含みます。ひきこもりというのはそういう状態を表現した言葉であって、病名ではないのです。
―やはり不登校がきっかけになる場合が多いのでしょうか。
船越:文部科学省は、心理的、身体的あるいは社会的要因によって登校しない、あるいは登校したくてもできない状況にあるため、年間30日以上欠席した者を不登校と定義しています(病気や経済的理由は除く)。学校に行っていないけれど、遊びには行けるという場合は、不登校だけどひきこもりではないです。そして、おっしゃったように、ひきこもりのきっかけが不登校というケースはすごく多いです。
―大人になってからそういう状態になる方もいますよね。ニートとひきこもりは違うのでしょうか。
船越:内閣府によると、ニート=若年無業者。若年無業者とは、高校大学に通学しておらず、独身で、ふだん収入になる仕事をしていない15歳~40歳未満の人で、予備校や専門学校などに通学している人や求職活動中の失業者を省いた人たちのことです。本当は働きたいけど求職活動をしていない人がニートである理由の一番は病気やけがです。それ以外に知識や能力に自信がない、希望する仕事がないなどの理由もあります。
―その理由は100人いたら100通りなんでしょうね。ではなぜひきこもりになってしまうのでしょうか。
▽6カ月を待たず相談を
船越:ひきこもりは強いストレスにさらされた時に、自分の心を守るための反応。ストレスへの対応力が弱いと小さなストレスでも心に不調をきたします。対応力が強い人でも災害や大切な人の死など大きなストレスを経験すると不調になります。ひきこもりとは、心の不調の現れ方の1つなんです。なので、ひきこもりそのものが悪いわけではない。ただその状態が5年10年と長期化すると、その人の生活に大きな影響を与えることになります。ショックなことがあって、長い間何もサポートを得られないでいると、長期化しがち。各自治体の相談できる場所にぜひ相談してほしいです。
―どんな時に相談したらよいですか。
船越:家族以外の交流がないとか、誰とも会いたくない気持ちが続いているとか、ひきこもりがちな生活から抜け出したいと思った時など、できるだけ早く相談することが大切です。ひきこもりの定義に6か月とありましたが、6か月を待つ必要はまったくありません。
―ありがとうございました。
▽うなずきながら話を受け止める
―神戸ひきこもり支援室の加島英義さんに、支援室の活動について教えていただきます。
加島:神戸ひきこもり支援室は令和2年2月に開設しました。ひきこもり相談は、人間関係や心の悩みが複雑に絡み合うことが多く、対応には専門知識や経験が必要になりますが、当室の相談員は全員が精神保健福祉士や社会福祉士などの有資格者なので、安心して相談していただきたいです。本人だけではなくご家族からの相談も受け付けていて、電話、メール、来所どのような方法でも可能です。他の支援機関での相談が効果的と思われる場合は、紹介します。