国内で相次ぐ自然災害で、文化財の修理費用の確保が困難な状況だ。文化庁は2020年、「文化財保護のための資金調達に関するハンドブック」を公表し、手段の一助としてインターネットで寄付を募るクラウドファンディング(CF)の活用を提案している。「寄付文化」のあり方が問われている。
2022年、法隆寺(奈良県斑鳩町)が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で参拝者が大幅に減少し、拝観料収入が激減する中、境内の整備費用を十分に捻出できないとしてCFを始め、1949(昭和24)年の火災で傷んだ金堂壁画の保存活用や境内の整備のための資金を募った例や、実相院(京都市左京区)が境内の文化財や庭園の修繕のために支援を呼びかけた例がある。
2022年10月8~10日、境内が美しく整備された高野山(和歌山県高野町)の世界文化遺産・金剛三昧院の山門を多くの参拝客がくぐった。2020年9月の台風で損傷した重要文化財・経蔵(きょうぞう)の修理完了に伴う落慶法要が営まれた。
経蔵は仏教建築で、経典や版木(はんぎ)などを保管する書庫。金剛三昧院の経蔵は、1223(貞応2)年に建立された。建築様式が東大寺(奈良市)の正倉院と同じ校倉造(あぜくらづくり)で非常に現存状態が良く、1922(大正11)年、国の重要文化財に指定されている。
当時の台風は本州直撃ではなかったが、標高約900メートルの高野山で、金剛三昧院周辺はピンポイントで強風に襲われた。境内にある樹齢400年といわれる「六本杉」の枝が折れ、このうちの1本が経蔵の檜皮葺(ひわだぶき)の屋根に突き刺さり、縦横約10センチの穴が開いた。
この六本杉には高野山の危機を救った天狗「毘張尊師(びちょうそんし)」が降臨したといわれ、御神木として祀られている。久利康暢(くり・こうちょう)住職によると、経蔵は重要文化財のため、文化庁への報告やしかるべき手続きを経ずに修復はできないという。檜皮葺は部分的な修繕はできず、トタン板をかぶせる応急処置を施した。
◆世界遺産高野山 金剛三昧院
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