この秋、パリで開かれたファッションショーで、話題となった日本人がいる。車いすに乗ったモデルがランウェイに登場するショーを手掛けた平林景さん(45)。日本障がい者ファッション協会(大阪府茨木市)の代表理事を務める平林さんは、3年前から「車いすでパリのランウェイへ」との目標を掲げ、仲間や支援者とともに一つ一つ準備を重ねてきた。夢を実現した平林さんにお話を聞いた。
ファッションショーは、2023年春夏パリファッションウィーク期間中の9月27日、パリ日本文化会館で開かれた。同協会のブランド「bottom’all(ボトモール)」の服に身を包んだモデルたちが次々とランウェイに現れ、車いすでポーズを決める。YouTubeで公開された動画には、スタイリッシュな衣装の数々とともに、モデルたちの強いまなざしと自信に溢れた表情が記録されている。
ショーのテーマは「if(イフ)…」。「もしも車いすが当たり前の世の中だったら、どんなデザインが生まれていたか、という世界観を表現しました」と、平林さん。
ユニセックス仕様の巻きスカートは、車いすの上に広げて着脱でき、垢抜けたデザインのパンツには、履きやすいようサイドにファスナーが装着され、ワンピースは、数か所にあしらわれたフックを好きな位置に留めることで、着やすさばかりでなくその人に合った美しいドレープを生み出せる。車いすを使う人から直接聞いた「人の手を借りずに服を着たい」「ワンピースやドレスを楽しみたい」などという声を反映させた作品群だ。さらに、京都の西陣織や土に還すことができるサスティナブル素材など、生地にもこだわり抜いた。
平林さんは「現地での反応はとても良かった」と振り返る。本番では何度も拍手が沸き起こり、終わった後も、席を立たず余韻を楽しむ観客が多かったという。「これがたった1日で終わるのがもったいない」、「想像していたよりもはるかに素晴らしかった」との言葉ももらえた。その言葉を裏付けるかのように、ショーを映像化したYouTubeの閲覧数はすでに4万回を超えている。
もともとアパレルとは無関係な仕事をしていた平林さんが最初に障がい者のための服を作りたいと決意したのは、同協会を立ち上げた2019年秋。車いすを使う男性が「手伝ってもらって服を着るのが心苦しいから、おしゃれを楽しむことを封印した」と嘆くのを聞いたのがきっかけだった。
◆パリでのファッションショーをまとめた動画
◆一般社団法人日本障がい者ファッション協会 https://jpfa-official.jp/
◆世界パラ陸上HP 平林景さんインタビュー https://kobe2022wpac.org/topics/1468/