日本六古窯の1つとして知られ、独特の味わい深さで人気を集める丹波焼。窯跡の発掘調査で見つかった壺や鉢をはじめ、菊、蝶などが描かれた壺の陶片、丹波焼のルーツを考える上で重要な他地域の作品など、貴重な資料を集めた特別展「丹波焼誕生はじまりの謎を探る」が兵庫県立考古博物館(加古郡播磨町)で開かれている。11月27日(日)まで。
1977年に行われた、丹波焼最古の窯の1つとされる三本峠北窯跡(13世紀~、丹波篠山市)の発掘調査の出土品を整理し、新たな考察を加えた展示構成。丹波焼発祥の謎に迫るアプローチとなっている。
特筆されるのは、多彩な文様が刻まれた陶器(刻画文陶器)のかけら。工具を用い、陶器の表面に菊の花や蝶、ススキやハギの葉などを彫り表している。陶片は同窯跡の廃棄場から見つかっており、有力者の骨を納める壺の一部とみられる。
文様は、渥美(愛知県)などで焼成されていた絵画的な刻画文陶器と比べてデザイン化されているのが特徴で、他産地との共通性は少なく、むしろ当時の日本製の青銅鏡「和鏡」背面の文様に似たモチーフがあるという。
展示の目玉の1つ「丹波菊花文三耳壺」(重要文化財、12世紀末~13世紀初頭、高さ約30センチ、個人蔵・愛知県陶磁美術館寄託)には、上部の口の周囲に満開の菊の花が重なる華やかな図柄が刻まれている。だが壺の下半分は無地。
同館の松岡千寿学芸員は、「真上から見る想定で文様が描かれている。有力者が壺に施す絵を職人に発注する際、鏡を見せて『こんな感じで』と依頼したのでは」と想像。また、常滑など東海地方で見つかっている窯道具と同じものが多数出土したことから、「技術を持った工人が東海から丹波までやってきて、やきものを作っていたのではないか。丹波窯の始まりは、刻画文陶器が契機になった可能性が高い」とみる。
◆秋季特別展「丹波焼誕生はじまりの謎を探る」
会場:兵庫県立考古博物館(〒675-0142 加古郡播磨町大中1-1-1)
会期:2022年10月1日(土)~11月27日(日)
観覧時間:9:30~17:00(入場は4時半まで)
休館日:月曜
観覧料:大人500円、大学生400円、高校生以下無料
問い合わせ:同館079-437-5589