続くカクテル作りでも、ハプニングが森崎さんを襲う。舞台上の酒のボトルは、国内大会では蓋を開けたものが置かれるが、本大会では未開栓の状態。それを開けようとして、左手を切ってしまったのだ。
「焦る気持ちは一切なく意外と冷静で、『今日はこんな日なんやな』と呆れたというか。でもあれで『こんなことで終わってたまるか。見とけよ』と、スイッチが入ったのかもしれません」と、当時の心境を振り返る。
応急処置後、手袋をしてカクテル作りに臨んだ森崎さん。さすがに普段ほどの余裕はなかったものの、落ち着いて赤色が鮮やかなカクテル「ビューティフル・ジャーニー」を世界に披露した。
相次ぐハプニングに見舞われながらも翌日の準決勝に進出。司会者から「JAPAN!」と呼ばれたときの、本人はもちろん現地応援チームの安堵感といったらなかった。
準決勝は、各部門の上位3人ずつ、合計15人で争われる。酒やカクテルの知識を問う「学科試験」と嗅覚や味覚を試す「官能試験」、7分間で5種類のカクテルを作る「スピードミキシング」の3種目で競い、上位4人が決勝に進む。
ここでも落ち着いた試技をした森崎さんだが、決勝進出には届かなかった。しかし最終日の表彰式で、「ロングドリンク部門」「学科試験」で1位を獲得。総合優勝のスウェーデン選手が「スピードミキシング」で1位だったことを除けば、2部門を受賞したのは森崎さんだけだ。