米夫:とある社会福祉法人なのですが、まず、“誰が来てもだいじょうぶな居場所”を紹介してもらって行くようになりました。居場所に慣れてきた頃、作業や生活訓練のグループワークができる事業所へ。そこでステップアップして最終的に就労支援事業所に通うことになりました。
南:段階を踏んでもらったことは良かったですか。
米夫:はい。ひきこもり時代には感じていなかったいろんなギャップに悩んだり、苦しんだりしながらも、そこの職員さんに支えられて何年かかけて少しずつ成長できた。それが今につながったと思います。相談相手は専門家なので、僕がどんな状態なのかよく把握してもらえました。
▽しゃべること自体が苦手ではなかったという発見
南:やはりプロにアドバイスをもらえるというのは大きいですね。トシさんはどうでしたか。
トシ:親に「相談室に行かないか」と言われて。なるほど、じゃあ行きます、とそれだけです。僕の中で自分を理解することができるようになった時期と親の誘いが大体一致した。タイミングは重要ですね。
南:実際に支援室に行かれていかがでしたか。
トシ:しゃべること自体、自分はそれほど苦手ではなかったという新たな発見をしました。「自分はこういう人間なんだ、どこにも行けないんだ」と決めつけていたのが案外そうでもなかったのかなと感じました。外に出られず、しゃべることができなかった自分が今しゃべっていることも驚きです。でも、これができたから「はい、次に行きましょう」というのはまだないです。客観的に見たらだいぶ遅いかもしれませんが、これが僕自身のペースです。
南:ご自身の体験を番組に出ていただいてお話いただいて、振り返って俯瞰して見て分析できるというのは、すごく大きな変化ではないでしょうか。
船越:トシさんの場合、ご自身を理解するのに、インターネットで地球の成り立ちから調べて、なかなか答えが出なかった。その後、相談員さんと話をする中で自己理解ができていった。人との関わりに中で自分を知っていくというのは、私たちみんなにとって自然なことだと思います。