国土交通省・神戸運輸監理部と神戸海上保安部が、12月10日から神戸港海域で年末年始の輸送に関する安全点検を行っている。2023年1月10日までの1か月間。
今回の安全点検は、2022年4月に起きた知床遊覧船沈没事故を受け、特に旅客線での安全管理規程をベースに、気象・海象条件を踏まえた運航の可否判断・航行中止の判断、乗組員の健康状態や過労状態の把握を重点に置いた。
12日は、神戸港・高浜岸壁(神戸市中央区東川崎町・ハーバーランド)の客船ターミナルに接岸中のレストランクルーズ船「コンチェルト」で、火災を想定した訓練が行われた。客室乗務員は、冷静に乗客を着席させ、「私たちは訓練を受けています、どうか安心してお待ちください」などと声を出し、乗客の退船命令が出た後は、乗客に救命胴衣の着用をうながし、船外へ避難誘導した。
神戸海上保安部によると、2022年に起きた事故件数(1~11月)は57件で、前年同期比でほぼ横ばい(マイナス2件)だが、船舶安全法違反(所有船が適正な検査を受けていない)、業務上過失往来危険、海上への不法投棄などの各容疑で検察庁へ送致した事件は、157件91人(プラス44件・22人)と大幅に増えている。
新型コロナウイルス感染拡大「第8波」の中、行動制限がない年末年始の客船やフェリーの利用者の増加が予想されるため、テロ対策をはじめ、乗客の安全に関する設備(救命胴衣やうきわ、消火器など)を点検したほか、神戸港で2022年9月に起きたパイロットボート衝突事故を受け、飲酒運転対策についても確認した。
神戸運輸監理部と神戸海上保安部は、4月の知床遊覧船沈没事故と9月の神戸港パイロットボート衝突事故を教訓に「ひとたび安全に関わる部分がおろそかにすると、重大な結果を及ぼす。貴重な人命を預かる旅客船事業者にとって、お客様に快適な船旅を提供するために、『安全確保』を事業の根幹としてもらいたい」と呼び掛けている。