コトーは、それが島の未来のためと理解しながら返事をできずにいます。
こうした中、島に台風が襲来し、土砂崩れが発生。けが人が出たもようです。診療所に次々と患者が運ばれてきました。医師もスタッフも少ない島の診療所はたちまち野戦病院のようになります。持病の狭心症が悪化したおばぁや、心臓マッサージが必要なおじぃがいます。コトーは懸命に処置を続けます。
「全員助けます」(コトー)
事態を冷静に見ている判斗は、島の人たちに指摘します。
「たまたま五島先生のような人がいたから20年間、この島の医療は成り立っていた」
いつまでもコトー先生に頼るのは間違いだ、と判斗は主張します。これまで島民たちはこの現実から目を背けてきました……。
原作は、山田貴敏のコミックです。2000年から「週刊ヤングサンデー」で連載され、2008年以降「ビックコミックオリジナル」へ移籍。単行本は累計1200万部を超えるベストセラーです。
テレビドラマとして2003年にシリーズが放送され、2004年のスペシャル版4回を経て、2006年にも連続ドラマとして第2シーズンがオンエアされました。いずれも20%前後の高い視聴率を誇る人気作品です。16年ぶりに映画として作られました。監督を務めるのは、テレビシリーズでも演出を担当した中江功、脚本は吉田紀子です。
離島の外科医“Dr.コトー”こと五島健助を演じるのは吉岡秀隆。診療所を支える看護師で、コトーの妻となった彩佳は柴咲コウ。シリーズからつながるキャストとして時任三郎・大塚寧々・泉谷しげる・筧利夫、小林薫・大森南朋・朝加真由美・富岡涼らが顔をそろえています。連続ドラマ時代は子どもだった神木隆之介や、蒼井優・堺雅人も映画に出演しています。
さらに島へ研修にやってくる新米医師・判斗に髙橋海人、新しい看護師に生田絵梨花が扮しています。
撮影は今年(2022年)の6月から8月にかけて行われました。
髙橋はドラマが始まった当時4歳で、再放送を母親と一緒に見ていたそうです。自分が出演すると聞いて「あの作品に出られるの!?」と驚いたと明かしています。
「再放送で見ていて、すごい名作というのはわかっていたし、あの世界観に自分が入れるのか…と思うと、気持ちが高ぶりましたし、自分がいただいた役の重みを受け止めながら、自分にできることを一つ一つ、真剣に熱を持ってぶつかろうと思いました」(髙橋)
また役柄について髙橋は「判斗とコトー先生は、医療に対しての向き合い方がまったく違って、判斗自身は現実主義でマニュアルに従って今までやってきた人で、それとは対照的に、効率も関係なく島民に対する愛情や優しさで仕事をするコトー先生は判斗からしたらすごく浮世離れしていて……」と分析し、「判斗がただ嫌な奴ではなくて『判斗みたいな人間もいるよな』と共感してもらえるようにと考えながら演じました」と撮影時の心境を語りました。