私たちの食卓に欠かせない野菜や肉などの“農林水産物”。その元には、おいしくて安心・安全なものを届けようと日々努力を続ける生産者がいます。生産コストの高騰などにより苦境に立たされている兵庫県内各地の生産者を、兵庫五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)の直売所や道の駅をめぐって取材する5回シリーズ。第3回は「淡路」です。
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南あわじ市の「美菜恋来屋(みなこいこいや)」は、兵庫県最大級の農畜水産物直売所です。コアラの見学もできる農業公園「淡路ファームパークイングランドの丘」に隣接しており、休日には1日で約2000人が訪れることもあります。
店内には、島の特産品である「淡路島たまねぎ」や「あわじ島レタス」はじめとした新鮮な野菜が並びます。ほかにも、淡路島産但馬牛の中から年間100頭ほどしか認定されない希少な牛肉「淡路ビーフ」や、淡路島で獲れた鮮魚、特産品を使用した加工品、スイーツなどもあり、目移りしてしまうほど豊富な品ぞろえです。また、地元食材を使用した料理を提供するレストランもあります。
「野菜や魚は“おすそわけ”してもらうことも多く、地元の人に直売所を利用してもらうのが難しい。だからこそ、生産者と意見交換し、試行錯誤しながら販路を拡大している」と話すのは、店長の茱萸(ぐみ)健太さん。地元をはじめ、県内外のシェフ200人ほどでLINEグループをつくり、その日の野菜の出荷状況を共有して注文を受け付けています。
飲食店からの要望によって生産をはじめた野菜も。例えば、カリフラワーの仲間の「ロマネスコ」や、香りが良い「ローズマリー」などのハーブ類、サラダや副菜に使う「ルッコラ」など。一般的な直売所では見かける機会が少ない野菜も美菜恋来屋に並びます。販路を拡大することで、生産者も安心して野菜を出荷できるそうです。そのほか、通販サイトでの販売も行います。
なかでも、年間50品目以上を生産しているのが本田正人さん。特産のたまねぎやレタスなどの野菜のほか、スイカやキウイフルーツなどの果物、鉢植えやメダカまで生産しています。畑などには、農家を目指す学生が手伝いに来ることも。