28年前、1995年の阪神・淡路大震災を奇跡的に乗り越えた日本酒『現外(げんがい)』。500ミリリットルのスリムな瓶に入った日本酒の価格は、なんと約22万円(税抜き)。そんな“幻の日本酒”が、24日(火)から数量限定で販売されます。先立って神戸市内にて行われたメディア向け試飲会で、その誕生秘話を聞きました。
『現外』の生みの親は、灘五郷・西郷(にしごう)の酒蔵・沢の鶴。阪神・淡路大震災で、7棟あった木造の蔵すべてを含む20棟以上の蔵が倒壊するなど、大きな被害を受けました。
そのような状況下で奇跡的に残ったタンクに入っていたのは、「酒母(しゅぼ)」と呼ばれる酒造りの“土台”となる液体。しかし、電気・ガス・水道がすべて止まっていたことから酒造りを継続することができず、やむを得ず酒母の段階で絞って清酒を作ったといいます。
酒母段階の液体は、一般的に甘みと酸味が強いとのこと。絞ったお酒も酸味が際立ち、商品として出荷することはできなかったそう。「造り手にとって、日本酒はわが子のよう。破棄するのではなく、熟成による味わいの変化に望みを託した。最初はかなり酸味が強かったが、20年ほど寝かせた頃から味が変わっていった」と、沢の鶴の西向賞雄さんは振り返ります。
震災を乗り越えた熟成酒の価値を見出し、販売するのは「SAKE HUNDRED」。1本2~4万円の酒を扱う高級日本酒ブランドで、日本酒におけるラグジュアリーシーンの開拓を進めています。
沢の鶴から販売に関する相談を受けて酒を口にしたという、SAKE HUNDRED ブランドオーナーの生駒龍史さんは、「ほかの熟成酒と比べても、ずば抜けておいしかった。これまでに出会ったことのない味わい」と話します。
『現外』との名前には、「“現”在の理(ことわり)の“外”にある唯一無二の日本酒」という意味が込められているとのこと。販売できないからと処分に回すのではなく、長きにわたり熟成させたからこそ生まれた味わい。まさに、「人の意志がつないだ日本酒」です。
その見た目や味わいはと言うと……。