男性が倒壊家屋の下敷きになった人を掘り起こしたのは18人。しかし、生きていたのは5人だった。13人の命は救えなかった。
「震災で亡くなられた6434人のうちの13人なのです。同じことは神戸だけじゃない。阪神間の芦屋でも、(仁川学院の校舎がある)西宮でも起きたのです」。阪神・淡路大震災が起きた1995年、講義を受けた生徒たちの親の世代の多くが20歳前後だった。こうした状況で震災に直面、あるいはリアルタイムで見聞きし、28年経った今を生きている。
■避難に「かくあるべき」はない
2018年6月の大阪北部地震。大阪府高槻市の小学校でブロック塀が倒壊し、登校中だった当時小学4年で9歳の女子児童が下敷きになり、犠牲になった。早川さんは「命を奪ったのは、ブロック塀そのものではない」と話した。早川さんが改めて思い知ったのは、「『身の安全を確保して。机の下に身を隠して』と指導するだけではいけない。”身の安全を確保する”、“机の下”という使い古された言葉を使うだけではなく、より具体的な避難方法を示すことが必要だ」ということ。学校や介護施設の危機管理アドバイザーならではの観点だった。
当時、大半の人がブロック塀が倒れるとは思わなかった。「屋外で揺れを感じた時に、どう行動するのか」。通学路には机もなければ、クラスメートも先生も、家族もいない。亡くなった女子児童のように、1人で歩いている時はどうすればいいのか、そこまで踏み込むことが必要なのだと訴える。大人は、こうした事実と向き合い、「もし、机がない場所ならどうするのか」ということを考え、伝えなければならないと説いた。
■安全と危険、隣り合わせ
早川さんの話は危機管理にも及んだ。阪神・淡路大震災以降、建造物の耐震技術は大きく進歩した。「じゃあ、それだけでいいのか?」と問いかけた。
見落としてはいけないのは、「身の周りには、安全なものと危険なものが混在している危険性」。耐震構造上、問題がないとされる建物も、部屋の天井に取り付けた空調設備、大きな窓ガラスなど、身近にあるものが危険なものになり、人に危害が及ぶこともある。それを普段からチェックするだけで、そこに意識が及び、有事の際にパニックにならずに済むとアドバイスした。