多彩な図柄、情報媒体でもあった器「印版手」がズラリ 大阪歴史博物館が特別企画展 3月21日(火・祝)まで | ラジトピ ラジオ関西トピックス

多彩な図柄、情報媒体でもあった器「印版手」がズラリ 大阪歴史博物館が特別企画展 3月21日(火・祝)まで

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 明治時代から昭和初期にかけて全国各地で大量生産され、日常使いの器として利用されてきた器「印版手(いんばんて)」。その多彩な図柄とレトロな時代背景を味わえる特別企画展「­ー橋本コレクション受贈記念­ー文明開化のやきもの 印版手」が大阪歴史博物館(大阪市中央区)で開かれている。3月21日(火・祝)まで。

さまざまな印版手
さまざまな印版手

 印版手は、当時の風俗や流行などを取り入れた図柄を、手描きによる絵付けではなく、型紙や銅版転写などの技法を用いて転写したやきもの。美しい青色が特徴で、多種多様なデザインの魅力、比較的廉価で入手できる点などから、現在も多くのファン、コレクターがいる。

 印版手収集で知られる橋本忠之さんが2017年、同館に1129点を寄贈。本展はそのお披露目にあたり、ほとんどの作品が初公開という。

会場の様子
会場の様子

 会場では「文明開化」「歴史・説話物語と文芸」「名所・風景と風俗」などのテーマに分けて約320点(うち260点が橋本コレクション)を展示。

 生活の西洋化、郵便や電信の普及など「文明開化」を喜ばしいものとし、寿ぎの思いがこもった作品「文明開化文字図皿」は、のしの意匠と「文明」「間化(※「間」は「開」の誤り)」の文字が施された華やかな1枚。当時の高揚感が伝わってくる、インパクトのあるデザインだ。

「文明開化文字図皿」(明治時代前期~中期)大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈)
「文明開化文字図皿」(明治時代前期~中期)大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈)

 明治から大正、昭和20年の終戦までは天皇を中心とした時代で、印版手にも天皇や大日本帝国、外交、国威発揚、戦争に関わる題材が多く登場する。印版手は情報を広く伝える媒体としての役割も果たしていたといい、大正時代以降、新聞やラジオが普及すると、戦闘場面を描いた印版手は少なくなっていったという。

「日露交戦記念大皿」(1905年、写真中央)など大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈) 
「日露交戦記念大皿」(1905年、写真中央)など 大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈) 

 劇的な時代の変化を映したものも。西洋の単位であるメートル法は1885(明治18)年のメートル条約加盟と1891(同24)年の度量衝法公布に始まるが、大正期に作られた「メートル法啓蒙図茶碗」表面には「一メートルは三尺三寸」「一リットルは五合五勺」などと書かれており、「新しい単位を確認する便利グッズとして、茶碗が重宝されていたのでは」と想像が膨らむ。

 また、明治後期の「古金銀と新貨幣図鉢」は、江戸時代に流通していた金・銀の貨幣と新しい貨幣を取り混ぜた図柄で、その違いが細密に表現されているのが面白い。

「メートル法啓蒙図茶碗」(大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈)正期)
「メートル法啓蒙図茶碗」(大正期)大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈)
「古金銀と新貨幣図鉢」(明治後期)大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈)
「古金銀と新貨幣図鉢」(明治後期)大阪歴史博物館蔵(橋本忠之氏寄贈)

◆特別企画展「­ー橋本コレクション受贈記念­ー文明開化のやきもの 印版手」
会場:大阪歴史博物館(〒540-0008 大阪市中央区大手前4-1-32)
会期:2023年1月21日(土)~3月21日(火・祝)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:3月21日以外の火曜
観覧料:大人600円、高大生400円
問い合わせ:大阪歴史博物館06-6946-5728

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