神戸市須磨区の路上で女性が刃物で刺殺された強盗殺人事件は2月21日、発生から20年を迎える。
2003年2月21日・午後10時40分ごろ、神戸市須磨区横尾の市営地下鉄・妙法寺駅の近くで、仕事を終えて自宅に帰る途中だったパート従業員の寺田和子さん(当時44歳)が何者かに刃物で刺され死亡した。兵庫県警・須磨署捜査本部は、のべ約5万4000人の捜査員を動員しているが、犯人検挙には至っていない。
19日、寺田さんの夫や地域の有志、兵庫県警・須磨署員らが、情報提供を求めたチラシを配り、呼びかけた。
寺田さんは事件から20年間、心の中に『止まっている時間軸』とその後の『進んでいる時間軸』が揺れ動くと話す。そして機会があるたびに、「犯罪によって家族の命を奪われた遺族は、一生この気持ちを背負い続ける」と訴えかけてきた。20年間、妻にいったい何があったのか、最期の言葉は何だったのか、そして、なぜ殺されなければならなかったのかと真実を追い求めている。
一方で、犯罪被害者等基本法の成立(2004年)や殺人事件などの時効撤廃(2010年)に向けての活動に力を注いできた。現在は主に関西の犯罪被害者でつくる「つなぐ会」の代表幹事を務めるが、2018年に18年間の歴史に終止符を打った全国犯罪被害者の会(あすの会)での活動にも精力的に関わった。
2022年、少年事件の記録廃棄問題が明るみに出た。犯罪被害者遺族としてともに活動する、神戸連続児童殺傷事件で次男・淳さんを失った土師守さんにも寄り添い、「つなぐ会」として神戸家裁に抗議文を出した。
さらに犯罪被害者やその家族などを総合的に支援する条例の制定に向けて動く。
兵庫県内では、2022年2月までに全41市町で被害者支援条例が制定されたが、支援内容に格差があるため「被害者がどの地域にいても平等に支援を受けられるよう、差を埋めるような条例を作ってほしい」と支援の拡充を求めている。
特に大阪・北新地ビル放火殺人事件(2021年12月)では、被害者の居住地が広域にわたったことから、都道府県をまたぐ支援の必要性も訴えている。
事件は全国に刑法犯認知件数がピークを迎えた2002(平成14)年の翌年に起きた。それ以降、認知件数は下降線をたどっていたが、昨年(2022年)、20年ぶりに増加に転じたことに寺田さんは危惧感を抱いている。さまざまな要因は考えられるが、「安全だと思っていた矢先に、(妻が殺害されtた)事件が起きた。身の回りの安心・安全を考えるきっけになれば」と願う。