兵庫県立美術館が所蔵する1万点を超える作品から、テーマに沿って作品を紹介するコレクション展。2023年の第1期展が開催されている。2023年7月23日(日)まで。
特集1では「虚実とあわい」と題し、近年コレクションに加わった作品や初公開の作品を集めた。
古来より美術作品は虚構と現実のあわいー中間領域ーを揺れ動く側面があったとされる。そのアプローチ(表現)の方法は作品によって異なる。「リアル」を追求しながら同時に「フィクション」であろうとしたり、その逆に「フィクション」でありながら現実世界を映し出す。特集1ではそんな虚実のあわいにある作品と、その多様な表現方法を紹介する。
例えば、絵画や彫刻で写実性を追求するとき、フィクションである作品に現実を写しとろうとしていると言える。しかし作品として出来上がったものには少しズレがあったり、描かれたものの存在そのものが浮き上がってくるような作品がある。
東影智裕の作品「侵食Ⅰ」は、木とうさぎの姿が見て取れる。よく見るとうさぎは皮膚の表面が傷ついている。東影は生と死の中間状態を表現したという。
木下佳通代の作品は、写真の中に写真が写り、その写真も変化している。どこまでが現実なのか一瞬考えてしまうような作品。
西山美なコの「ハ〜イ わたしエリカ♡」テレフォン・プロジェクト(1992年)は、ピンクに染まったステレオタイプの「少女性」=メルヘンの世界をギャラリーの中に作り上げ、そこに現実に通じる回路を紛れ込ませた。その回路とは街に貼られたポスターで、記載された番号に電話をすると、ギャラリーの中に設置された電話が鳴るという仕組みだった。
県立美術館が所蔵する彫刻作品がキャラクターとして登場する漫画も。2014年に開催された「美術の中のかたち」展のために描かれた横山裕一のネオ漫画「ふれてみよ」シリーズには、菅井汲の「小鬼」やミロ・ジョアンの「人物」などが漫画のキャラクターとして登場する。展示室には「ふれてみよ」シリーズとそこに登場する彫刻作品が並び、見ている側が2次元と3次元の「あわい」を体感することができる。