この日、ウクライナへ2012年から毎年訪ね、音楽を通して文化交流を続ける歌手のOno Akiさんがウクライナへ鎮魂の歌を捧げた。約100年前に作られた民謡「プリーネ カーチャ」は、若いウクライナ兵士が困難と遭遇した時に母を思い出して歌ったとされ、戦死した兵士を見送る歌。
そして、母親に感謝の気持ちを伝える「リドナ マティ モヤー(愛しい母よ)」など、世界で最多の20万曲とされるウクライナ民謡の抒情的なメロディーが、ホールを包み込んだ。
コンサート終盤には、Akiさんが2017年に発表した「祈り~ウクライナへ」を熱唱した。その3年前、ロシアはウクライナのクリミア半島を併合している。
この歌の「黄金に広がる大地が消えて、立ち上がった戦士たちよ 勇気のあるコサックの血よ 戦争とさよなら 永遠にさよなら 叫び続けた若者たちよ 未来の星となれ」というフレーズに涙ぐむ姿も見られた。
Akiさんはロシアによる軍事侵攻から1年経ったこの日、CDアルバムをリリースした。タイトルには軍事侵攻が始まった日時を入れた。「2.24 5 a.m. ウクライナに栄光あれ」。ウクライナ民謡やAkiさんのオリジナル曲など10曲が収録されている。
・・・・・・・・・・・・・・・
■この戦い、いつまで続くのか
会場にはウクライナ出身の国際政治学者、グレンコ・アンドリイ氏の姿があった。アンドリイ氏は「ロシアの目的はウクライナ全土を支配することと、ウクライナ民族を消滅させることにある」と話した。この1年間、ロシアはさまざまな方法でウクライナを征服しようとしたが、ウクライナ側の抵抗は激しく、ロシア側も10万人以上の犠牲者を生んだ。「こうした中、ウクライナの人々がひとつの民族として存続するには、戦い続けるしかない」と、苦渋の表情で訴え、ウクライナへのさらなる支援を求めた。そして、ロシアによる軍事侵攻は「平和な世界秩序への挑戦といえる。場合によっては、世界を巻き込む事態になりかねない」と危惧感を募らせる。