南北朝時代の色彩、8年がかりの修理で鮮やかに 東寺の寺宝『弘法大師行状絵巻』 宝物館春期特別公開 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

南北朝時代の色彩、8年がかりの修理で鮮やかに 東寺の寺宝『弘法大師行状絵巻』 宝物館春期特別公開

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「弘法大師行状絵巻」巻八『八幡鎮座』(後期展示)810(弘仁元)年、薬子の乱が起き、嵯峨天皇が空海に命じて造営
東寺・鎮守八幡宮
「弘法大師行状絵巻」巻十一「東寺灌頂」(後期展示)東寺の灌頂院は、空海入定後に造営された 灌頂とは頭頂部に水を注ぎ、悟りの境地に進んだことを証明する儀式
東寺・灌頂院 重要な儀式が行われる 毎年、後七日御修法(ごしちにちみしほ)の結願日・一月十四日と、正御影供に閼伽井を公開する四月二十一日だけ門扉が開く
「弘法大師行状絵巻」巻二『室戸伏龍』 空海が草庵を結び、「法性の室戸と聞けど我が住めば 有為の波風寄せぬ日ぞなき」と詠んだ
「弘法大師行状絵巻」巻四『図像写経』

 近年、彩色の剥離や折れが目立つようになったため、2014(平成26)年度から2021(令和3)年度までの8年間にわたる修理を終え、より鮮明になった。東寺の新見康子・文化財保護課長は「絵巻物は観るたびに広げるため、傷みやすく、折れや亀裂も多い。いかに平滑(凹凸なく滑らかな状態)にするか、大きな課題だった」と話す。

ニカワで剥落止め
本紙を表裏2枚に分ける

 このため、修理前のデジタル撮影にはじまり、彩色を現状のまま保存するためにニカワを用いた剥落止め、絵の部分については緑青などによる酸化の進行を抑えるため、アルカリ成分である胡粉(ごふん)を含んだ紙で裏打ちをした。
 さらに折れや亀裂には細く裁断した楮(こうぞ)紙で補強するなど、デリケートな作業が続いたが、長年の汚れも丁寧に除去されて彩色がよみがえった。

亀裂には細かく裁断した楮紙を補充
最終段階、本来の継ぎ場所を確認しながら合わせる

 新見さんは、この絵巻について「読んで聞かせて、鑑賞するもの」と説明する。全12巻を通して、登場する人物の顔が表情豊かに描かれており、「いかにわかりやすく伝えるか」という思いを垣間見ることができるという。

「弘法大師行状絵巻」巻五『三鈷投所』
806(大同元)年8月、空海は唐から帰国する際に日本の方角へ向かって金色の三鈷杵を投げると、三鈷杵は紫雲の中に飛び去った
「弘法大師行状絵巻」巻六『東大寺蜂』
空海は弘仁年間に奈良・東大寺の別当職に任じられるが、その頃に大きな蜂が現れ、人々を刺すようになった。嵯峨天皇がこの寺に空海を住まわせると蜂は姿を見せなくなった

 【東寺~世界文化遺産 真言宗総本山 教王護国寺 公式ウェブサイト】

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