毎年、2月の初めにデザインを仕上げる福田さんがこだわるのは青色。年によって濃淡はあるが、どうしても空の色は外せない。1年を通して感じたことや、思うことを込めている。
栞のデザインを始めたころは、比較的淡い色が中心で、キャンバスに白色が占める部分も多かったが、ここ数年は、これまで避けていた明るい色も取り入れ、全面が色付くようにしている。
「それは表現の幅を、探求したくなったのかな」。大学で専門的に絵画を学んだ福田さんならではの言葉だ。肌で感じた社会情勢なども踏まえて、どこまで表現できるのか模索が続く。
今年のデザインは、青空の下に川が流れ、橋を架ける様子を描いた。川が隔てていたものを“つなげる”のか、橋を架けて、思いを未来に“つなげる”のか。
つなげなければ、後世にこの事故は伝わらない。メンバーは皆そう思っている。
福田さんは毎年、デザインを手掛ける際に「客観性」を大切にしている。
ひとりのアーティストとしてではなく、事故の被害者として描く。忘れてはいけないのは、自分の手から離れ、”ひとつの栞”として人に渡るとき、受け手がどうとらえるのかということ。事故に直接関わっていない人にも手に取ってもらい、「せめて4月25日だけは、あの事故を思い出してほしい」との願いを込める。
そして「栞を受け取ったみなさんが、この絵を見て、さまざまな思いを自由に寄せてくれたら」と話す。
すぐ隣で声を掛ける親友の言葉が響く。「いつかどこかで、本気で自分と向き合わないと。結局、自分を客観的に見ずに、嫌なことを忘れ去ろうとしても、忘れること自体に失敗するから」。
同級生の親友・木村仁美さんも同じ車両に乗り、負傷した。同じ苦しみの中、声かけあった18年。 良き理解者が、今も寄り添ってくれる。
福田さんの表現する絵は、どこまでも優しい。その優しさの中に、鋭い視点とメッセージが込められている。
「空色の栞」は4月7日からJR尼崎、伊丹、川西池田、宝塚など6駅で無料配布。一部の公共施設でも配布する予定。今年も、安全・安心な社会の実現を誓う思いを伝える。