明石市立文化博物館(兵庫県明石市)では、5月14日(日)まで、春季特別展「写真家が捉えた 昭和のこども」が開かれている。関係者らによる分かりやすい解説シリーズ「リモート・ミュージアム・トーク」の今回は、同館学芸員、工藤克洋さんのお話。展示の内容や来場者の反応などについて教えてもらう。第1回は「戦前から高度経済成長期のこどもたち」。
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明石市立文化博物館では、春季特別展「写真家が捉えた 昭和のこども」を5月14日(日)まで開催しています。
木村伊兵衛、入江泰𠮷、熊谷元一、土門拳、植田正治、桑原甲子雄、飛彈野数右衛門、緑川洋一、濱谷浩、山端庸介、林忠彦、井上孝治、岩宮武二、芳賀日出男、長野重一、麦島勝、田沼武能、熊切圭介、齋藤康一の19名の名写真家が撮影した、戦前から高度経済成長期における、さまざまなこどもたちの写真170点を展示しています。戦災孤児、家業の手伝いをして働く様子、路上で笑顔を見せながら元気に遊んでいる姿など、当時の世相も分かる貴重な記録となっています。
開幕以来、多くの感想をいただいております。今回は名写真家の作品展示ということで、普段から写真撮影をされている方のご来館が多いようです。
「私も写真をやるので作者の本もたくさん持っているが、さすが時代を先取りした着想がにくい、恐れ入った」(90代男性)
他にも、「被写体に断ってから撮るのが一般的になった昨今、展示されているような、スナップで撮ったこどもの姿は、もう撮れない」との感想もありました。展示作品は、気軽にスナップ撮影が可能だった時代だからこそ撮れた写真だということも来館者の感想から分かりました。
展示作品は昭和30年代のものが中心のため、若い方にとって、作品に写るこどもたちの姿は、自身のこども時代とはまったく異なるものの、現在との違いや共通点を探しながら鑑賞している方もいらっしゃるようです。
「私の生まれる前の写真をたくさん見ることができた。今と昔では生き方が違うが、とても興味深いなと思いました。昔の方たちは、色んな試練を乗り越えて強いなと思った」(20代女性)
「戦後という厳しい時代でありながら、ささやかな幸せをみんなで探しているような雰囲気に日本の良さを感じました。また、私のこども時代と似た遊びもしていて、自分の中にも昭和が残っていると感じました」(30代女性)
作品のこどもたちの姿から、今にはない昭和のこどもの強さを見出したり、また同じような遊びの発見から、自分の中にも昭和という時代を見出したりと、世代をこえた楽しみ方をされているようです。
ただ、やはり多いのが、写真からこどもの頃の自分を探す、もしくは思い起こすという方です。
「紙芝居の写真では、子どもたちの中に、私が紛れているのではと、つい探してしまいました。親に内緒で、よく見に行きました」(70代女性)
写真に写るこどもたちと同じ体験をしていた世代にとって、その当時を思い出すきっかけとなっているようです。
中にはこんな方も。