『写真家が捉えた 昭和のこども』戦前から高度成長期 明石市立文化博物館【Rミュージアム・トーク 1】 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

『写真家が捉えた 昭和のこども』戦前から高度成長期 明石市立文化博物館【Rミュージアム・トーク 1】

LINEで送る

この記事の写真を見る(3枚)

「昭和34年の筑豊の写真があった。私はそこで生まれ、当時1歳でした」(60代男性)

 土門拳が昭和34(1959)年に撮影した筑豊のこどもたちの写真を一部展示していますが、この方は、その場にいたというのです。本展の写真にはいらっしゃらなかったようですが、他の土門作品の中に写っているかもしれませんね。

 以上のように、若い方から、昭和期にこどもだった世代の方まで、現代との違いを発見したり、記憶を思い出したりと、さまざまな視点で作品を鑑賞していただいております。そういった楽しみ方ができるのは、名写真家たちがこどもたちに目を向けていたからだといえます。

 本展で展示している写真にどのような意味があるのか、一例をあげましょう。

 昭和34(1959)年に米軍占領時下の沖縄で、現地の日常を撮影した福岡の写真家・井上孝治の写真を本展にて数点展示していますが、その写真は、自宅に保管されていたようで、撮影から30年後の平成元(1989)年に沖縄で井上の写真展が開催され、公になりました。

「大きな魚が捕れた」沖縄・糸満漁港 昭和34年 井上孝治
「大きな魚が捕れた」沖縄・糸満漁港 昭和34年 井上孝治

 その際来場者が、無いと思っていた自身のこどもの頃の写真を見つけて、井上に焼き増しを依頼したと言われています。なぜ無いのかというと、戦地であったことや、戦後の貧困のためカメラを所持することが難しく、写真を撮ることがなかったためだとされています(黒岩比佐子『音のない記憶』文芸春秋、1999年)。

 スマートフォンが普及している昨今、こどもの写真を撮ることはさして難しいことではありません。しかし、昭和30年代にこどもだった方は、当時の写真が家にないということも多かったようです。

 ありそうで実はあまり残っていない、意外に貴重な戦前から高度経済成長期のこどもの写真。この機会に鑑賞してみてはいかがでしょうか。

(明石市立文化博物館学芸員・工藤克洋)

「写真家が捉えた 昭和のこども」第2会場
「写真家が捉えた 昭和のこども」第2会場

◆明石市立文化博物館2023年度春季特別展「写真家が捉えた 昭和のこども」
期間 2023年4月1日(土)~5月14日(日) 
休館日 会期中無休
開館時間 午前9時30分~午後6時30分(入館は午後6時まで)
観覧料 大人800円 大学生・高校生 600円 中学生以下 無料
    65歳以上の方は半額。身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・障害者手帳アプリ提示時、本人と介護者は半額。シニアいきいきパスポート提示で無料。
問い合わせ 明石市立文化博物館(明石市上ノ丸2-13-1) TEL 078-918-5400

LINEで送る

関連記事