「院政なんて、とんでもない。(後任には)何も言わないよ。市役所に来ることもない」。泉市長はそう断言した。
職員の前でも、「“前例踏襲”が嫌いな性格、その前例になりたくはない。丸谷聡子新市長の体制では、私のことは忘れてほしい」と言い切った。
早くも次のステージを見据える。「ゆっくりするのは1か月ぐらいかな。この(黙ってられない)性格だから」と、新たなプランの一端を明かした。
それは「こども政治塾」。早ければ6月1日から始動したいと話した。
ハイブリッド型で、リアルでもオンラインでもいい。小学生、中・高生、大学生、自分が市長になりたいと思ったのが10歳で、早熟だったこともある。街で中高生から声をこけられたり、SNSでメッセージが届いたりもする。そこで政治に興味を持つ子どもは多いことを実感したという。「これからは、全国の子どもたちを対象に光を当てていく。虐待や貧困に苦しむ子どもも多い日本だから」。
泉市長が執筆した「子どものまちのつくり方」という本がある。そこには、「子どもを核として、みんなにやさしいまちづくりが人口・財政・経済の好循環を創る」ためのさまざまな方策が記されている。
退庁の時が来た。夕陽がまぶしい明石市役所の玄関ロビーには、市民約150人が詰めかけた。
「いずみさ~ん、いずみさ~ん!」聞こえてくるのは子どもたちの声。隣には小さな手を握る若い母親。何組の親子が見送りに訪れただろうか。これが12年間、走り切った先に見えた風景だった。
「きょうを限りに、ここ(市役所)を去ります。これからはひとりの市民として明石を見つめていきます。選挙で選ばれた者が、その立場の権限を行使することが本来の姿ですから」。
「丁寧な市長が、丁寧に仕事をしてくれる。明石は大丈夫」。5月1日からは、自らが後継として選んだ丸谷聡子・新市長による明石市政がスタートする。