兵庫県洲本市と大阪府岬町が、かつて結ばれていた旅客船(1999年廃止)の定期航路復活に向けた取組みを進めている。今年(2023年)は5月3日~11月5日(日)、土曜・日曜・祝日限定で運航している(お盆期間は 8/11~8/15の平日も運航)。
現在、大阪湾を横断する航路はないが、淡路島~深日間の航路は戦後、1949(昭和24)年には存在した。洲本港(洲本市)と深日港(ふけこう・岬町)を結ぶ航路は、遅くとも1961(昭和36)年ごろには開設されていたという。その後、明石海峡大橋開通の影響などで1999(平成11)年に廃止された。
洲本~深日間の航路が、神戸市や阪神間を経由しない「大阪湾南回りルート」として実現すると、淡路島や大阪府南部だけでなく広域的な観光の需要が高まる。これによる経済効果が見込まれるほか、大規模災害発生時の物流・人流の代替手段確保にもつながる。さらに「広域型サイクル・ツーリズム」を活用したまちづくり事業としても期待が高まっている。
こうした中、新たに国の地方創生推進交付金事業の認定を受け、2022~24年度の3年間の継続が決まった。このため、両市町は2017(平成29)から、社会実験船「深日洲本ライナー」を運航、利用状況を調査している(2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため休止)。
その結果、1便あたりの平均乗船者数が増えた。このうち自転車を利用する乗客が全体の15%を占めるという。利用は土曜・日曜・祝日が多く、計4万3278人が乗船した(社会実験は479日間 3594便運航・自転車積載数5377台)。
過去の実績を踏まえ、特に利用の多かった土曜・日曜・祝日、需要の見込める春から秋にかけて運航し、今後の航路復活の可能性を検証するという。期間中、利用者1万人を目指し、島内の施設などと連携して利用者が楽しめるプランを考える。
これまでの社会実験で、利用者へのアンケート結果から、洲本市と岬町を目的地として利用した割合が低かったことから、幅広い利用者に滞在・消費を促す仕組みづくりを地域全体で行う必要があることが課題となった。またコスト面をみると、乗船料収入だけで民間会社が運航するのは難しいという。
■「航路を活用、これまでにない旅を」洲本市