iPS細胞を使った再生医療も 「神戸アイセンター」の取り組み 最先端の研究開発を行う企業・施設が集結 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

iPS細胞を使った再生医療も 「神戸アイセンター」の取り組み 最先端の研究開発を行う企業・施設が集結

LINEで送る

この記事の写真を見る(4枚)

 高齢化社会で、老化に伴う目の病気に悩む人も増えている。そうした中、眼科領域の研究から治療・患者ケア・社会実装までを一貫して行う全国初の施設『神戸アイセンター』(神戸市中央区)が開設から5年を迎えた。同センターの構成企業の一つ『株式会社VC Cell Therapy(ブイシー・セル・セラピー)』取締役の堀清次さんに、同センターの取り組みや今後の展望について話を聞いた。

 神戸アイセンターが開設したのは2017年12月。再生医療研究および網膜変性疾患・黄斑部疾患治療の第一人者である高橋政代氏(当時:理化学研究所 網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー、現:株式会社ビジョンケア代表取締役)の主導により、神戸市が人口島・ポートアイランドで構築を進める「神戸医療産業都市」内に設立された。

神戸アイセンターの外観

 その後、目的別子会社として、2020年8月に遺伝子治療実用化を目指す『株式会社VC Gene Therapy(ブイシー・ジーン・セラピー)』が、また、堀さんが在籍するVC Cell Therapyは、2021年3月に細胞治療実用化に向けて立ち上げられた。

「VC」はビジョンケアの略で、「Cell Therapy」は細胞治療を意味する。神戸アイセンター病院での診察・治療を軸とし、iPS細胞を使った再生医療など最先端の研究開発を行う企業・研究施設、治療後のリハビリや視覚障害者への情報提供を行う福祉施設などが集い、さまざまな目の病気について幅広い支援を手がける。

 VC Cell Therapyでは、眼の奥にあって光を受け取る“視細胞”や、この細胞をサポートする“網膜色素上皮細胞”を対象に、これらをiPS細胞から製造している。

研究開発の様子
研究開発の様子

 同社が対象としている疾患の一つに「加齢黄斑(おうはん)変性」がある。老化とともに“黄斑”という組織がダメージを受けて変化し、視野の中心がぼやけたりゆがんだり、暗くなったりといった症状を引き起こす病気だ。

「細胞が変性してしまうことで起こる病気。患者の目にiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を移植し、視力視野を回復・維持させる治療法を開発しています。目の分野は新しい技術が入りやすい。細胞治療だけではなくて遺伝子診断や検査機器なども含め、先進的な技術を積極的に受け入れていく土壌があるのが特徴です」(堀さん)

 いま医療業界では、保険財政が厳しい中で先進的な高度医療をどのように提供できるかが大きな問題になっているという。医療系のベンチャーは、最初に多大な資金を確保。その資金で開発を行い、ようやく10年後に収益が上がるようなモデルが多いそうで、一般的な治療となるまで時間がかかってしまう。日本では再生医療に適した法律の体系があるが、もっと早い段階で患者に適用する方法がないか、学会や保険会社など各方面と議論・検討している段階だと堀さんは話す。

「民間の生命保険・医療保険の中には、わずかな負担で先進医療特約を追加できるものがあります。そうした仕組みを使って、再生医療を早く患者さんに届けることができないかと議論を進めています。だんだんと状況が改善してきていることを感じている段階ですね」(堀さん)

LINEで送る

関連記事