【2】1967年:100円硬貨の改鋳(かいちゅう:新たに作った貨幣を市場に流通させること)
改鋳された100円硬貨が大量流通したことにより、自動販売機が一気に使いやすくなりました。同時期におつり機能も搭載され、格段に便利になった時期でもあります。
【3】1969年:缶コーヒーの登場
従来はビンもしくはカップ式が主流だったため、持ち運べて好きなタイミングで飲むことのできる缶飲料の登場は人々に大きな衝撃を与えました。ちなみに、UCC上島珈琲株式会社から発売された世界初の缶コーヒーは瞬く間に働く大人たちに広まり、その後自動販売機の定番商品として定着しました。
【4】1974年:ホット&コールド自動販売機の登場
今でこそ、ひとつの自販機であたたかい飲み物とつめたい飲み物が買えるのは当たり前ですが、当時の技術ではどちらかしか買えませんでした。ホットとコールドの両方を購入できる自動販売機が生まれたのは日本が世界初です。「ホット&コールド自動販売機」の登場によって季節ごとにラインナップを変えることができるようになり、1年を通して飲み物を楽しむことができるようになりました。この登場をもって、現在の自動販売機の原型ができたとも言えます。
―――飲料以外にもさまざまな自動販売機が流行していますよね。
飲料用が普及したことで、さまざまな自動販売機が生まれました。ハリスのチューインガム、麺類、アイスクリーム、カップヌードル、電子レンジ内蔵のハンバーガー自販機などはすべて60~70年代に登場しています。当時は各電機会社が競うように工夫を凝らしたユニークな商品を開発していたようです。現在はほとんど残っていませんが、どれも大変話題になったものばかりなので記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
―――日本は“自動販売機大国”なのだとか?
実は、日本ほど普及している国は世界では珍しいようです。というのも、屋外への設置は治安のいい日本だからこそできること。海外では中のお金目的で狙われたりとトラブルになる可能性があるので、基本的に屋内にしか設置されていないそうです。現在、日本での年間売り上げは約5兆円にものぼり、世界一だといわれています。
―――現在、5度目の変革期を迎えていると聞きました。
長い歴史において、現在、1974年のホット&コールド自動販売機の登場以来となる大きな変化の真っ只中にあるそうです。それが、最近街中でも目にすることの増えた「冷凍自動販売機」です。コロナ禍の影響で自宅での食事が増えたことにより、冷凍食品用の自動販売機が爆発的に普及したのです。最近ではギョウザなどの代表的な冷凍食品だけでなく、肉や魚をはじめとした生鮮食品、一流レストランのメニューなど、そのラインナップはどんどん増えており、まさに5度目の転換期を迎えています。
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普段、何気なく利用している自動販売機。その裏には、日本だけでも100年以上もの長きにわたる歴史が隠されていました。
ちなみに、記事内で紹介したレトロな自動販売機の数々が見られるスポットが京都府と大阪府にあります。大阪・枚方市には現在日本で数台しか稼働していない、ハンバーガーの自動販売機が。2年前に設置され、売り切れる日もあるほどの人気ぶりだそう。京都・舞鶴市には“レトロ自動販売機の聖地”として、全国から多くのファンが訪れる「ドライブインダルマ」があります。これを機に、昔懐かしいレトロな自動販売機を体験してみては?
※ラジオ関西『Clip』2023年5月25日放送回より
(取材・文=藤田慶仁)