街なかや公園など、どこにでもいる身近な鳥類「スズメ」。皆さんは、公園の木や街路樹などで、1本の木だけに集中してたくさんのスズメが群がっているのを見て、疑問に思ったことはないでしょうか。他にも木があるのに、なぜその1本だけに集まるのか? 「チュンチュン」と仲間と交わす鳴き声は、まるで会話しているようにも聞こえますが実際のところは……?
身近なのに意外と知らないスズメの生態について、国立大学法人北海道教育大学函館校の三上修教授に話を聞きました。
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――そもそもスズメは群れを作る生き物なのでしょうか?
【三上修教授(以下、三上教授)】 いろいろ例外もあるのですが、わかりやすいようにお話します。また数も、おおよそのものです。
まず、鳥の中には“群れる種”と“群れない種”がいますが、スズメは“群れる種”です。ただし、季節によって群れるかどうかが違いますし、さらに群れの役割も違います。
スズメの生態について、季節を追ってお話しします。
■春:子育て中は、群れではなく夫婦で行動
スズメは春になると子育てをします。このときは、夫婦で巣を構えます。基本的に夫婦単位で行動するため、群れることはありません。ただ、近所の親スズメが集まって同じ場所で餌を探すことはあります。あるいは、誰かが餌をまいていると集まってきますが、有機的な群れではありません。単なる“烏合の衆”です。
■初夏:50羽程度の子スズメたちの群れ
桜が咲いてからひと月後くらいに、ヒナが巣立ち始めます。親鳥は、1週間くらいは子スズメと行動をともにしますが、その後は、2回目の子育てに入ります。すると子スズメたちは、近所の子スズメたちだけで集まるようになります。まだまだ弱いので、みんなで行動しているほうが、敵が近づいたときなどに気付けて安全だからです。
■晩夏から秋:50〜100羽程度の群れ、群れが複数集まって数千羽単位になることも
晩夏になると、親鳥の方は2回、多い場合には3回子育てをしたあと、巣から離れてみんなで集まって行動するようになります。50~100羽程度です。子スズメも混ざっています。ただし、親子関係はたぶんほとんど関係ありません。その辺りの木で、みんなでそのまま寝たりもします。
上記のような小さな群れで寝るものもいますが、これらの群れがさらに集まって、皆で寝る場合があります。ヨシ原や竹やぶで寝るものが数千羽単位になることもあります。かつて、江戸では「雀合戦」といって、このねぐらにいるスズメを見物したそうです。現代では、駅前などに大量のスズメが集まることがあります。