《相次ぐ少年事件記録廃棄》最高裁、陳謝 深々と頭を下げ長い沈黙 土師守さん、一定評価も「歴史的史料との認識欠け、怠慢」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

《相次ぐ少年事件記録廃棄》最高裁、陳謝 深々と頭を下げ長い沈黙 土師守さん、一定評価も「歴史的史料との認識欠け、怠慢」

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重大な少年事件などの記録が事実上の永久保存に当たる「特別保存」とされず廃棄されていた問題で、1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で次男・淳君を失った父親・土師守さんが2日、神戸家裁(神戸市兵庫区)で最高裁の担当者から調査報告書の内容について説明を受けた。

 担当者は、「非常に貴重な、社会的・歴史的意義のある記録を廃棄(喪失)した」と述べた。同席した河瀨真弁護士によると、深々と頭を下げ、長い沈黙ののちの謝罪だったという。

最高裁からの報告を受け会見する土師守さん<2023年6月2日午後 神戸市中央区>

 最高裁の内部規定では、少年事件の記録を、少年が26歳になるまで保存するとしているが、史料的価値の高い記録や社会的影響が大きかった事件の記録などは、26歳以降も「特別保存」として事実上、永久保存するよう規定している。
 最高裁が5月25日に公表した調査報告によると、神戸連続児童殺傷事件の記録は、神戸家裁所長(当時)の判断がなく、記録の価値について十分な検討がされないまま廃棄されたとした。
 神戸家裁によると、記録が廃棄されたのは2011年2月28日とみられるという。多数の職員(当時)らは、記録の特別保存について「例外中の例外」などと考えていた。

最高裁担当者からの説明を受けるため、神戸家裁に入る土師守さん<2023年6月2日午後 神戸市兵庫区>
神戸家裁

 最高裁担当者からの説明後、神戸市内で会見した守さんは、「事件記録の保存は、それを活用するということが前提となっている。最高裁が本来、事件記録の意義を理解していたからこそ、保存規定を設けたと理解している。しかし、記録を保管するスペースが不十分なまま、特別なものでなければ廃棄するという考え方が“負のスパイラル”を生み出した」と指摘した。

「廃棄の基準が決まっておらず、怠慢だ」と守さん

 そして、「(神戸連続児童殺傷事件)について、特別保存に付すべき事件であると考えた職員がいながら、所長が廃棄されてしまったことを知らなかったこと自体、(組織として)怠慢だと思った。やはり積極的に記録を残そうとしなかったのではないか」と疑問を呈した。

 守さんは、最高裁の報告書の内容については、きちんと調査され納得していると一定の評価をしている。そして事件記録について「(裁判所は)裁判を進めるための資料という考えが中心で、歴史的史料であるという認識が完全に欠けていたと感じる。私たち遺族にとって、亡くなった次男の生きざまが記されたもの、歴史であり、その認識の違いがあった」と指摘した。
 そして「(後世に残す)証拠に値する史料としての復元は、現実的に難しいと思う。ただ、関係者などから資料提供があれば、事件記録ではなく事件関係書類として保存してほしい」と望んだ。

 遺族代理人の井関勇司弁護士は「戦後最大の少年事件と言われたこの事件の記録を、すんなりと廃棄できるのか。その感覚がおかしい。誰も止めることはできなかったのか。現に西鉄バスハイジャック事件(2000年・福岡県で発生)の記録が残されていることを鑑みれば、防げた過ちだった」と怒りをにじませた。

「戦後最大の少年事件記録、廃棄を誰も止めることができなかったのか」井関勇司弁護士(写真左)
河瀬真弁護士「当初から最高裁に調査結果の報告を強く要望、その意を汲んだと受け止めたい」

 今回の調査対象は全国36家裁・支部の少年事件52件に、民事裁判を加えた計約100件。最高裁は2022年11月以降、廃棄当時の裁判所職員への聞き取り調査などを実施した。

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