【担当者】 当時は“家に置いてあるのが当たり前”という存在だったと思います。また、粘着性のあるハイトリ紙がぶら下がっていたことから、ハイトリ紙が髪の毛にひっついて取れなくなったりする、なんていうトラブルも日常茶飯事でした(笑)。
今はダメかもしれないですが、ハイトリ紙に塗られているネバネバとした粘着剤を竹竿の先につけて虫取りをする子どもも多くいました。セミを捕ることが多かったそうです(笑)。
―――ハイトリ紙の最盛期は?
【担当者】 1955(昭和30)~1980(昭和55)年代ごろまでが最も使われていました。なかでも、ピークは1960年代でした。そのころはリボン型が年間4500万個、平型が約2000万個、ハイトリ紙全体としては約6500万個の売り上げを記録しました。同じような商品を販売していたメーカーのなかでも、群を抜いた売り上げだったそうです。
―――ハイトリ紙はどんな場所に置かれていた?
【担当者】 時代によって違いがあると思います。最盛期は台所やリビングなど、おもに住宅で使われることが多かったです。その後、住宅環境が徐々に改善されて自宅にハエが出にくくなってからは、食堂やラーメン屋などの厨房で使われることが多かったです。
―――ハイトリ紙が少なくなったのはなぜ?
【担当者】 やはり、住宅環境の改善によって生活圏内でハエが見られることが少なくなったことが大きいと思います。殺虫剤などの登場により、ハイトリ紙のような“捕まえる”アイテムよりも、“殺虫”や“寄せつけない”アイテムの需要が伸びたことも原因だと思います。
しかし、定期的に殺虫剤をまくことで耐性を持ってしまったハエが、数年に一度大量発生することがあるんです。そういうときには、今もハイトリ紙を利用いただくことが多くあります。
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100年もの長きにわたってハイトリ紙の製造を続けるカモ井加工紙株式会社は、現在、工業用マスキングテープをはじめとしたテープ類の製造を主としているそう。日本の住宅衛生を保ったハイトリ紙の技術を使い、車や建物の塗装養生用テープなど、今も私たちの生活を支えている。
いよいよ夏本番。虫が多くなるこれからの季節、自宅の害虫対策を改めて見直してみるのもいいかもしれません。
※ラジオ関西『Clip』2023年6月15日放送回より
(取材・文=濱田象太朗)