「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり…」で始まる平家物語の一節に、"はかなさ"の象徴として登場する「沙羅双樹(さらそうじゅ)」が臨済宗・妙心寺塔頭「東林院」(京都市右京区花園妙心寺町・通常は非公開)で見頃を迎え、特別公開されている。6月27日まで。
例年、この時期に見ごろとなる「沙羅双樹」、正式にはナツツバキ(夏椿)という。白い花が朝に咲き夜には散ることから、平家物語では「盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」と記されている。
東林院のナツツバキの古木は約400年前に植えられたと伝わる。西川玄房住職(84)によると、釈迦が入滅した場所に生えていた沙羅の木はインド原産の熱帯樹で。日本ではほとんど育たないことから、ナツツバキを代用したという。今年は例年より1週間早く、6月初めに咲き始めた。
アメリカ・ロサンゼルスから訪れた60代の男性は、京都、東京へ2週間の滞在中に、日本に住む友人に勧められて東林院を訪れた。かつて、ビジネスで何度も日本に来ていたが、四季の移ろいとともに見頃を迎える日本の花々に毎回発見があるという。
「アメリカでは、物事の終わりや“はかなさ”という考え方がないが、1日で咲き切り、枝から落ちる花を見て、何とも言えない気持ちになった。日本人の“わび・さび(WABI-SABI)”の精神が、少しわかったような気がする」と感慨深げに話し、旅の思い出にした。