かつて、日本人の死因は「ガン」「脳卒中」「心臓病」が多くを占めており、それらは三大疾病と呼ばれていました。しかし、高齢化社会が進む現代で増加傾向にあるのが、「誤えん性肺炎」です。加齢による機能低下が原因であることから、誰にも等しく発症リスクがある誤えん性肺炎。予防方法や治療法などについて、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――誤えん性肺炎になる人は多いのですか?
実は増えてきているんです。一般的な肺炎は子どもさんも発症するものなのですが、誤えん性肺炎は高齢者が発症しやすい病気なんです。通常、空気の通り道と食べ物の通り道というのは、口の中から分かれています。このはたらきにより肺に食べ物が入らないようになっているのですが、高齢になると食べ物と空気の分別が下手になり、肺に食べ物や唾液が入り込んでしまって誤えん性肺炎を発症するんです。高齢者は大きな病気を患っていないとしても、加齢により機能は低下してしまうため誤えん性肺炎を発症してしまうリスクを持っているんです。
――つまり、65歳以上の高齢者に多いということなのですね。
そうですね。かつて、日本人の死因は「ガン」「脳卒中」「心臓病」が多くの割合を占めていましたが、今は「肺炎」が第3位にまでのぼっているのです。
――予防方法はあるのでしょうか?
まずは、たとえ誤えんしてしまっても危険のないように、口の中をきれいにしておくという予防法があります。歯みがきや舌みがきを使って口の中をきれいにすることが予防となり、就寝前はもちろん、朝起きてすぐの歯みがきも非常に大切です。ほかに、嚥下(えんげ:食べ物を飲み込み胃に送り込むこと)のための体操があります。これは首まわりや喉の筋肉を鍛えることが目的で、首まわりやほほの運動をすることで飲み込む力をつける体操です。
――治療法や投薬はあるのですか?
咳を出やすくするような薬はあるのですが、飲み込む力を強くするための薬というのはありません。そのため、治療はリハビリが中心となります。