スーパーやコンビニで販売されている牛乳は、紙パックやビンの容器に入っていることがほとんど。ほかのドリンクのように、ペットボトル入りを見かけることはめったにありません。その理由について、一般社団法人日本乳業協会に聞きました。
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牛乳が日本で販売されだしたのは、明治時代初期の1870年頃。当時は、ブリキ缶で運んだ牛乳を柄杓ですくって鍋やどんぶりに入れる“量り売り”が主流だったといいます。その後、1928年(昭和3)頃には東京警視庁が「牛乳営業取締規則」を改正、牛乳の殺菌を義務付け着色びんを禁止しました。これにより、牛乳を販売する際は無色透明の広口びんで紙栓をするというルールができ、牛乳瓶での販売が主流になったそうです。
1938年(昭和13)に入ると、アメリカのエクセロ社が紙容器である「ピュアパック」を開発します。ここから流通やライフスタイルによりマッチした紙容器が広く使用され、1962年(昭和37)頃からは、日本でも本格的に紙容器が流通するようになったといいます。
実は、日本ではおよそ16年前までプラスティック容器での牛乳の販売は認められていなかったそうです。その理由は、栄養価が高く雑菌などが入ると傷みやすいという牛乳の特性に配慮するため。常温で持ち運ぶ可能性があるペットボトル入りでの販売は、衛生面から不安視されていました。
2007年(平成19)10月、乳等省令の改正で容量や表示に注意することを条件に種類別牛乳へのペットボトル容器の使用が許可されたものの、日本乳業協会では「一度に飲み切れる350ml以下」か「直接口で飲むことや常温で持ち運ぶことが無く冷蔵保管される720ml以上」のペットボトルのみを販売可能とする自主基準を設けています。また、気温が10度を超える場所には長時間置かないことや、開栓した後はできるだけ早く飲みきることなどの注意書きを容器の見やすい箇所に表示するようにといった基準も設定しているそうです。
ただし、キャップを締め直して持ち運ぶことが多いペットボトルは、新鮮な状態が美味しい牛乳の特性にはマッチせず、あまり需要が見込めそうにないといった理由から、ほとんどのメーカーではこれまで通りビンか紙容器での生産を継続しているそうです。
気温が上昇するこれからの時期は、牛乳に限らずあらゆるドリンクの管理に気を付けたいところ。日本乳業協会によると、「ペットボトル入りの牛乳を購入した際は、キャップを開封したらできるだけ早めに飲み切って、新鮮な状態で楽しんで下さい」ということでした。
(取材・文=村川千晶)