桂三枝や明石家さんま、お笑いコンビ・ダウンタウンなどのマネージャーを歴任した中井秀範さんが、1日、ラジオ番組に出演。一般社団法人日本音楽事業者協会(JAME)の専務理事を務めるなかで感じた、日本の音楽業界への思いを語った。
1981年に吉本興業株式会社に入社し、桂三枝や桂文珍、お笑いコンビ・ダウンタウン、明石家さんまなどのマネージャーを歴任。2015年の退社後は、一般社団法人日本音楽事業者協会で専務理事を務める中井さん。
現在はおもに「芸能界のインフラ整備のようなこと」を行なっているそうで、「テレビ番組の同時配信に向けて、許諾のあり方や進め方、対価をどうするかについて放送局と話をしたり。コンプライアンス問題について、メディアを挟んで企業へ提言することもある」と話す。
枠にとらわれない働き方を通じて、日本の音楽にも関わっている。配信サービスなどのサブスクリプションによって音楽を楽しむことができる現代を、「昔と違って何十年も前の曲から最新の曲まで、ごちゃ混ぜで聞ける」とコメント。さらに、「これまでのように、新しい音楽がどんどん積みあがってアップデートされていくスタイルではなくなっていますよね」と付け加えた。
配信サービスが普及するとともに、CDが売れないという問題も起こっている。「音楽(だけ)で稼いで食べていくことは難しい」と同意しながらも、「そもそも昔から、CDが売れてもアーティストに入ってくるお金が少ないという構造があった」と提言。そのうえで、「ライブをやったりグッズを売ったりして収益を上げるか、“ファンダム”と呼ばれる熱狂的なファンのコミュニティーみたいなものを作らないといけない」と持論を展開した。
「日本のファンクラブの特徴にも問題点がある」と中井さん。コロナ禍の配信ライブにおいて、ファンクラブ会員数が7万人いるにもかかわらず視聴者数は半分にも満たない3万人だった例があるという。「残りの4万人はチケットを取るための水増しだったとも考えられる」と推察し、“ファンクラブにはチケットを取りやすくするために入る”という基本的な構造に原因があるのではと指摘した。
さらに、中井さんは「日本にはファンとアーティストが直接つながる機会が少ない」と語る。「日本の芸能界において偶像として存在することを求められるスターやアイドルは、人間くさかったり、気軽に話しかけてはいけないという伝統が根強い」とし、「 ファンミーティングのようなイベントを増やすなど、ファンへのフォローがもっと必要なんじゃないか」とコメントを残した。
連続起業家兼アーティストで番組パーソナリティーのCEOセオも、「韓国のアイドルの世界的ヒットが、ファンダムの影響力を物語っているのかもしれませんね」と大きくうなずいた。
【この日のリクエスト曲】
レッド・ツェッペリン『ロックン・ロール』
吉田拓郎や泉谷しげるなど、フォークソングばかりを聴いていた中学生のころ、友人の家で初めて聴いたこの楽曲に「こんな音楽があるんだ」と衝撃を受けたという。
※ラジオ関西『セケンテー/ぼくらは囚われない』2023年7月1日放送回より