漬物の定番・たくあん。大根をヌカに漬けて作られていることは広く知られていますが、白い大根が漬物になると黄色に染まるのはなぜでしょうか? 宮崎県宮崎市にある、たくあん漬けで有名な漬物メーカー「野崎漬物株式会社」営業本部長の田中恵太さんに聞きました。
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田中さんによるとたくあんが黄色くなるのは、大根に含まれる辛味成分「4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート」の働きによるものだといいます。大根を塩とヌカに漬け込むと発酵が進むにつれこの辛味成分が分解され、他の成分と結合し黄色く変色します。「たくあんのイメージを再現するため」や「全ての商品を年間通して均一な色にするため」にクチナシ色素等の天然着色料を使用するケースもありますが、基本的には着色をせずとも1年程度漬けていれば自然と濃い黄色に染まるそうです。
たくあんに使用する大根は、スーパーや青果店でよく見かける最も一般的な品種「青首大根」とは別物だといいます。たくあんには市場にはほとんど出回らない「白首大根」と呼ばれるものが使用され、青首より辛味が強く水分が少ないという“漬物に適した品種”です。
現在、日本国内の大根の流通量はその90%近くが青首大根。白首大根は10%以下しか流通せず、そのほとんどがたくあんなどの漬物作りに使用されているそうです。
ですが、同じ大根の漬物でも“白いもの”を見たことがある人も多いのではないでしょうか?
「11月〜1月末頃までの大根の収穫期直後に販売されるたくあんは、漬け込む期間が短いため白いまま出荷されることもあります」(田中さん)
とはいえそのほとんどは、たくあんではなく「大根の塩漬け」と呼ばれる別の食品なのだそう。ヌカを使用せず、その時期ごとに採れる大根を塩に漬けて1か月程度で出荷するため、たくあんとはまた違ったさっぱりとした味が楽しめます。