兵庫県明石市で2001年、花火大会に詰めかけた多くの見物客が歩道橋上で転倒し、雑踏の中11人が亡くなった事故は、7月21日に発生から22年を迎えた。
事故の遺族有志が昨年(2022年)、この日に出版した書籍「明石歩道橋事故 再発防止を願って」は、愛する肉親を失った遺族の思いや、安心・安全な社会の実現を願う気持ちをつづり、今一度、原点に返りこの事故を振り返る記録性の高い資料として注目されている。
そこで、この書籍の内容を、幅広い世代や、さまざまな環境で過ごす人へ向けて、事故発生日の7月21日にYouTubeで音声訳として公開した。
これは、明石市社会福祉協議会に登録している音声訳ボランティアグループ「サークル 音のさんぽみち」が、視覚障がい者からのリクエストで制作したもの。
これはDAISY(デイジー)図書と呼ばれ、音声とともに文字や画像が表示されるデジタル文書。表記された文書を聴きながら、画面上で絵や写真を見ることができる。本来、視覚障がい者以外は聴取できないとされるが、関係先の承諾を得てYouTubeでの公開が実現した。
遺族有志によると、今回の公開目的には「3つの思い」があったという。
まず、デイジー図書の存在を知り、「心のバリアフリー」を進めたいという思い。遺族有志は、健常者の方にも音声訳を聴いてもらい、こうしたボランティア活動を知り、誰もがすぐにできる“心のバリアフリー”を実践をしてほしいと願っている。
新型コロナウイルス感染者拡大の波は、人々の分断を生んだ。だからこそ、声を掛け合う社会を作りたいという気持ちを強く持ったという。
次に、文字だけではなく音声として、幅広く伝えたいという思い。書籍出版後の2022年8月11日、京都府亀岡市で「亀岡平和祭保津川市民花火大会」が3年ぶりに開催された。その終了後、最寄りのJR亀岡駅に観客が押し寄せ、あわや大惨事という混乱が起きた。この事態に、歩道橋事故の遺族らは敏感に反応した。警備計画の不備など、さまざまな要因が指摘されたが、遺族らは歩道橋事故の教訓が生かされていないのではとの思いを強くしたという。2023年には、新型コロナウイルスが感染法上「5類」に分類され、規制が緩和された。こうした時期だからこそ、夏祭りなど群衆が集まる時期を前に、再発防止を訴えたいとしている。
想(書籍「明石歩道橋事故 再発防止を願って」の音声訳)[YouTubeチャンネル]