―――アイスキャンデーは珍しかった?
【久保田さん】 戦後の“冷たい食べ物”といえば、ラムネやかき氷などのイメージが強かったので珍しかったと思います。高度経済成長期に入るとさまざまな“冷たい食べ物”が登場しましたが、「甘い」「冷たい」「食べやすい」、そして「リーズナブル」な「北極アイスキャンデー」は多くの人々に食べてもらうことができました。
材料が手に入りづらかった当時から現在に至るまで、「夏の暑い時期に冷たいものをできるだけ安く・おいしく食べてもらいたい」という思いからアイスキャンデーを作り続けています。
ちなみに、大阪・難波のような大きな商業地でアイスキャンデーを売るというのは、「北極」が初めてだったそうです。
―――最も売れた時期は?
【久保田さん】 高度経済成長期、特に1970年代ごろが最も売れていました。現在は1日に約3000本ほど作っているのですが、当時の戎橋(大阪市中央区)界隈は本当に多くの人が行き交っていて、1日に2〜3万本ほど作っていました。平日も多くの人々が店を訪れてくださり、店の前は“列”というよりも“群がり”ができている感じ。順番待ちなんてまったくなく早いもの勝ちだったため、お客さん同士でのけんかは日常茶飯事でした。
―――どんなお客さんが多かった?
【久保田さん】 特に、ご家族へのお土産として買って帰られる男性が多かったです。そのため、アイスが溶けてしまわないようドライアイスを一緒に入れてお渡ししていました。お持ち帰り用にドライアイスを提供したのは、「北極」が初めてだったそうです。
現在もお中元としての需要は高いですが、当時からたくさんの発注をいただいていました。会社などに贈る際には、ハムやビールよりも喜ばれることもあったのだとか。
ほかにも、「なんばグランド花月」など吉本興業さんの劇場が近いこともあって、舞台の合間などに明石家さんまさんや島田紳助さんをはじめとした多くの芸人さんにも来ていただいていました。現在も芸人さんはよく来てくださっていて、西川きよしさんは1人で200本ほど購入されることもあります。
―――現在はどんな人が購入している?
【久保田さん】 今でもお土産として購入する男性が多いですが、観光客にも多く来ていただいています。海外の人からは「ミックスジュース」や「レモン」などのフルーツ系が人気です。
オンラインショップでも販売しているのですが、オンラインでは「昔よく食べていた」「テレビで見た」という人、お中元・お見舞いの品としても購入いただいています。