陶芸作品を中心にテキスタイル、版画など多彩な仕事で注目を集めるアーティスト・鹿児島睦(かごしま・まこと)の初の大規模な展覧会が、市立伊丹ミュージアム(伊丹市宮ノ前)で開かれている。2023年8月27日(日)まで。
会場では、朝に始まり夜に終わる「1日」が、器やファブリックなどで表現され、穏やかな時間が流れている。人々の暮らしを想い、日々作品を作っている鹿児島さんの日常、そのもののようだ。
動物や植物をモチーフにした器およそ200点はすべて新作。「あさごはん・ひるごはん・ばんごはんと、それぞれの時間と食卓をイメージして鹿児島さんが本展のために制作したもの。鹿児島さんは『できるだけ無造作にやりたい』『毎日、淡々と作っている』と仰るのですが、会場でも流している制作風景の映像からも、手際よくつくられている様子が伺えます」と市立伊丹ミュージアムの岡本梓学芸員は話す。
その根底にあるのは「これが作りたい」ではなく「誰かの手に渡る」ということ。これは鹿児島さんのサラリーマン時代の経験が大きいという。鹿児島さんは美術大学を卒業後、インテリア会社に勤務しディスプレイや品質検品、マネージメントを担当。客からのクレームを処理することもあった。その経験から客が何を求めているのかや、品質を価格のバランスなどを学んだという。だから草木や猫や鳥など身近にいる動物など「人に喜んでもらえるモチーフを描く」。使う色は10色だが、それ以上にカラフルに見える。すべて手作りなので、ひとつとして同じものはない。
また、児童文学作家の梨木果歩さんが、今回鹿児島さんが制作した器の中から何枚かをチョイスし、そこからインスピレーションを得て物語を書き下ろした。そのストーリーと器を展示し、物語の世界へ誘うコーナーもあり、「器だけど、ある意味『絵本の原画』展」(岡本学芸員)となった。絵本は8月中旬に出版される予定だ。
この他、ファッションやインテリア、フードなど、国内外のさまざまなブランドとコラボレーションしたプロダクツも展示する。その一部、今回の展覧会に合わせて作られたトートバッグや手ぬぐいはミュージアムショップで購入することもできる。