「介護福祉施設の入居者が施設にいながらVRで旅行を楽しむ」。そんな未来が近く当たり前になるかもしれません。
神戸市は1日、神戸市北区の特別養護老人ホームでVR旅行の体験会を開きました。
これは福祉領域におけるVR・ARテクノロジーの可能性を発信していくために、同市がMeta日本法人のFacebook Japanと共同で取り組む「VRを活用した未来の福祉プロジェクト」によるもの。
同プロジェクトでは、今年3月から神戸市垂水区の住民らが地元のおすすめスポットを360度カメラで撮影。Facebook Japanのサポートも受けながら、VR旅行の素材となる360度動画コンテンツを完成させました。
今回の体験会ではこの動画を、特別養護老人ホーム「六甲の館」の入居者が体験。VRヘッドセットを装着し、VR空間で垂水区内にある名所、舞子公園や五色塚古墳、明石海峡大橋などを“訪れ”ました。
93歳の女性は、五色塚古墳を散策。垂水区のキャラクター「ごしきまろ」が愛嬌をふりまきながら近づいてくると、VRごしにハグし、「家族にも体験させたい」と笑顔を見せました。
また、90歳の男性は、明石海峡大橋の橋脚や主塔を見学。「娘が垂水に住んでいたので、孫に会いによく通いました。大きな橋脚のところも孫と歩きました。懐かしいなぁ!」と感嘆の声をあげていました。
360度動画の制作からこの日の体験会まで、プロジェクトを引っ張ったのは東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太氏。介護施設で機能訓練指導員として働いていた際に、リハビリへの意欲を保ってもらうツールとして、VRの活用を思いついたといいます。
「いつも同じ室内でリハビリを繰り返すより、生まれ育った街や旅先を歩きながらリハビリをした方がモチベーションに刺さりますよね。心が動くと体も動く。いつか実際に訪れたいという目標もできる。また(360度動画なので)見回す行動も増え、首を回す能力の維持向上にもつながります」と、その効果を説明していました。