まだ暑さ厳しいこの時季は、冷たいものが食欲をそそります。冷製スープを提供する店も多いなか、少し変わった、他にはなさそうなスープを提供する店が兵庫県神戸市にあります。週末ともなると、日本各地からそのスープ目当ての客が来店するのだとか。
北区鈴蘭台で1988年に創業したレストラン、ビストロピエール。35年の歴史を重ねています。その看板メニュー「メロンボウルヴィシソワーズ」が、神戸のインスタグラマー・ウラリエさんも「他に見たことない!」と驚いた独特な一品とのこと。考案のきっかけや重ねてきた工夫について、同店の店主に聞きました。
■挑戦的メニュー!? メロン×ビシソワーズ
「メロンボウルヴィシソワーズ」は 半分にカットしたメロンをまるごと器にし、種部分をくり抜いたところへジャガイモの冷たいポタージュ「ヴィシソワーズ」を注いだ、見た目のインパクト大のオリジナル料理です。網目を描くチーズ味の「テュイル(薄焼きクッキー)」が上に添えられており、食感の違いも楽しめるといいます。
■始まりはコンソメスープ
同店のメニューの中でも古株で、30年以上前から地元で親しまれてきた「メロンボウルヴィシソワーズ」。当初はコンソメスープを注いでいたそう。始まりは、“生ハムメロン”のように、メロンのおいしさを十分に引き出すには塩味の強いものが一番良いと考え、塩味を効かせたコンソメスープをメロンに注いだこと。以後、しっかりとした塩味がある上、メロンとさらに相性の良いヴィシソワーズにバトンタッチしました。
■その年だけの味 年々変化を続けるレシピ
同じメニューといえど、毎年全く同じものが出ることはありません。工夫を凝らし、年々アップデートを続けているそうです。
今年は、カヌレ型でつくられたコンソメ味のゼリーが入っています。時間が経つにつれメロンの甘みとコンソメの塩味がまざりあい、味が変化していくため、最後まで飽きることなく味わえるといいます。また、模様のすじを流れるビシソワーズが美しく、視覚的にも楽しめるのだとか。
ゼリーが入っていると、メロンに注げるヴィシソワーズが少なめになるため、牛乳ポットを別添えして「追いヴィシソワーズ」を楽しめるようにしたそう。
じつは、昨年はスープをかき氷のようなソルベにして来店客の目の前で削って提供。趣向は大きく異なるものの、人を楽しませたい気持ちは変わりません。
■遠方からの団体客が「食べる会」開催も
毎週日曜ともなると、メロンボウルヴィシソワーズを食べることを目的に、遠方から団体客が訪れるといいます。先日は金沢からの来店があったとのこと。見た目の濃厚さとはうらはらに、案外あっさりとしていて重くないとして年配客からの人気も高いそうです。
洋食の街で長年工夫が凝らされてきた、「見て・食べて」楽しめる夏のスープです。
※ラジオ関西『Clip火曜日』2023年7月4日放送回より
(取材・文=みねほのか)