休みの日に遊ぶ子どもたちをみて、自らの子ども時代を思い出す人も多いだろう。虫取り、泥んこ遊び、秘密基地。懐かしい記憶に思いをはせる際にふと、工場やどぶ川など強烈な悪臭が生活圏から少なくなったと感じることもあるかもしれない。そうした快適なニオイの環境を維持しているのは、悪臭公害を予防する脱臭技術だ。
世界でも有数の技術を誇る日本の脱臭業界で、さまざまな脱臭方式を開発、技術力が高い評価を受けている企業が神戸にある。ゴミ処理場や下水処理場、し尿処理場といった施設の脱臭装置を主に手がけている株式会社一芯(神戸市西区)の取締役・総務部長の濱口学さんに、昨今の悪臭予防技術について聞いた。
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濱口学さんの父親で、同社社長の正明さんは以前、大手脱臭装置メーカーに勤めていたが、民事再生に伴ってメンテナンス部門からの撤退が決定。脱臭装置の性能を今後も保証しようという使命感で同社を平成19年に立ち上げた。
取締役・総務部長の濱口学さんに話を聞くと、同社はこれまで様々な新しい脱臭方式を世に送り出し、中には特許を取得した技術もあるという。
「日本で今、現役で悪臭公害を防止するという機能を果たしている会社でこれだけ特許を持っている会社はうちだけだと思います」と濱口さんは胸を張る。
悪臭公害の内容が時代によって変わってきたという。かつて問題となったごみ処理施設や工場、どぶ川などがほとんどなくなった一方で、焼き鳥店のにおいや野外焼却といった、昔なら悪臭といわれなかったものを悪臭として感じる人が増えている。「においは慣れてしまうと気付かないもの。文化的なものでもあるので線引きが簡単ではないんです」と濱口さん。
同社で採用している脱臭の方式は大きく分けると、活性炭吸着法、生物脱臭法、薬液洗浄法という3つに分かれる。匂いというのは基本的に分子として存在し、その分子をどういうふうにしてなくすかが大きな課題。匂いの分子を活性炭で吸着させて移すというのが活性炭吸着法だ。